福島第一原発事故
2016/06/02 - 15:10

県民健康調査データ~県立医大の目的外利用、県把握せず

福島県が福島県立医大に対して事業を委託している「県民健康調査」をめぐり、福島県立医大は2012年(平成24年)の段階から、県から委託されている目的とは別の研究に、健診データを利用していることがわかった。OurPlanetTVが一部黒塗りの研究計画書を入手した。
 

 
OurPlanetTVが入手した文書は、2012年(平成24年)8月22日付けの「(データ利用・集計データ利用)申請書」と「計画書」。福島県立医大放射線健康管理学講座の緑川早苗講師が申請代表者となっており、共同研究者には、大津留晶教授、柴田義貞特認教授、鈴木眞一教授、山下俊一センター長(当時)の名前が並ぶ。研究名は、「甲状腺超音波検査を用いた甲状腺体積のびまん性甲状腺疾患スクリーニングへの応用」だが、利用データの種類や範囲、利用目的、発表方法など全ての項目が黒塗りされ、研究の全体像は明らかではない。
 

 
県民健康調査の検診データについては31日、学術研究への活用ルールを協議する検討部会が設置されたばかり。議論の中で、福島県立医大内の研究であっても、委託事業以外の研究は、第三者機関で審査を受けるべきとの意見があがっていたものの、すでに、福島県立医大で、委託事業以外の研究が実施されていることを、県の担当職員は把握していなかった。
 
福島県個人情報保護条例によると、第7条2項において情報提供に関する例外規定を定めており、「学術研究のため」であれな、利用目的以外の目的のためであってに個人情報を利用したり、提供できることになっている。また県民健康調査の甲状腺検査は、同意書には、利用目的に中に「学術的研究目的」が含まれることが記載されている。
 
福島県個人情報保護条例
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/1072.pdf
 
しかし、甲状腺エコー検査のデータは県から管理を委託された情報である。実施機関である県への報告や許可を得ずに目的外使用したとなれば、条例違反の可能性もある。
 
福島県立医大の研究者らは上記の研究に関連するものとして、「小児・若年者の甲状腺超音波検査でびまん性甲状腺疾患の機能異常を予測できるか」(緑川早苗、志村浩己、鈴木悟、伊藤祐子、福島俊彦、鈴木眞一、大津留晶)という論文および「小児・若年者に対する超音波による甲状腺容積の年齢および性別基準範囲について」(鈴木悟、緑川早苗、福島俊彦、志村浩己、大平哲也、大津留晶、阿部正文、柴田義貞、山下俊一、鈴木眞一)という論文を執筆し、日本内分泌学会雑誌に昨年、掲載されている。
 
福島県立医大の会議録によると、昨年2月、学生のデータ利用についての可否や可能性が議題にあがり、教育的なデータ利用についても検討している。
 

びまん性甲状腺疾患とは、甲状腺全体がはれる病気。甲状腺がしこりによってはれる結節性甲状腺腫とは異なる。福島県民健康調査では後者の結節性甲状腺腫(甲状腺がん)のスクリーニングを目的としているが、チェルノブイリでは前者のびまん性甲状腺腫(甲状腺肥大)も大幅に増加している。びまん性甲状腺腫になった場合、甲状腺の機能が低下したり亢進したりする橋本病やバセドウ病になる可能性がある。

 

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