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ICRP新勧告「被災者を守れない」〜市民団体が批判

投稿者: ourplanet 投稿日時: 金, 08/23/2019 - 13:55




国際放射線防護委員会(ICRP)が、大規模原発事故時の新たな防護基準についてパブリックコメントを募集していることを受け、環境団体など7団体が緊急の記者会見を開き、「福島の教訓を反映されていない」と批判。日本の多くの市民がパブリックコメントを送るよう呼びかけた。

「大規模原子力事故時の人と環境の放射線防護」
「Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident」
ICRPがパブコメを募集しているのは、「大規模原子力事故時の人と環境の放射線防護」と題する98ページにのぼる英文の報告書。この報告書をもとに、原発事故後の緊急時の防護基準を勧告する「109勧告」と、回復期(現存被曝状況)に関する「111勧告」の2つの勧告を見直すとしている。



国際環境NGOFoEジャパンの満田夏花さんは、福島原発事故では、校の使用基準が、公衆の被ばく限度の20倍にあたる年間20ミリとされ、放射線管理区域よりはるかに高いレベルだったことに父母たちが怒った経緯を説明。従来の基準は、緊急時では年間100 1 mSv から20mSv 、回復期(現存被曝状況)では20ミリシーベルトのできるだけ下方から参考レベルを置くとされていたが、日本政府は参考レベルを使用することはなく、住民の意向を無視して避難指示を解除したと批判。「ICRPの勧告は生かされなかったし、政府の恣意的な運用を許した」と批判した。

さらに満田さんは、新勧告の執筆したICRPのタスクグループは、放射線審議会委員の甲斐倫明氏が座長を務め、原子力規制庁職員の本間俊充氏が副座長をしていると指摘。「放射線勧告を執筆する側にまわるのはありえない。日本の規制当局職員が執筆しているのは、どんなに高潔な人物であろうが、利益相反であり避けるべき。」と述べた。

「order」の意味は?~1ミリシーベルトをめぐる
今回の勧告で、「回復期」の参考レベルと記載されているのは、「10mSv」という数字だけ。従来は「20mSvから1mSvのできるだけ下方に参考レベルを置き、その代表的な数値は1mSvである」とされていたことと比べると、大きな緩和となる。

このことについて、原子力資料情報室の片岡遼平さんは、「甲斐委員によって公開された日本語訳の抜粋には、「⻑期的な目標は年間 1 mSv 程度まで被ばくを低減することである」と訳されているが、原文は、「The long-term goal is to reduce exposures to the order of 1mSv per year」。「「order」という言葉は、物理学の世界では桁数のことを意味しており、1〜9を意味する」と指摘し、「10ミリ以下は防護する必要がないという、大幅な緩和につながる恐れがある」と反発した。


ICRPが公表した勧告案の「CONCLUSIONS(結論)」にある線量基準の表(p55)

勧告案を作成したTG93座長・甲斐倫明氏が翻訳し公開した線量基準の表の日本語訳

TG93ドラフト主要部分仮訳
甲斐氏の発表資料

チェルノプイリと福島の実相反映されず
同報告は、チェルノブイリ原発事故と、福島原発事故の2つの過酷事故の経験についても記載がある。しかし、チェルノブイリ原発事故の調査を続けていきた「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークの吉田由布子さんは、記述内容にばらつきがあり、偏りが大きいと批判。また、汚染地域を規定し、被災者の救済を定めている「チェリノブイリ法」についてまともな記載がほとんどなく、問題があるとの見方を示した。

さらに郡山市から神奈川県に避難している元看護師の松本徳子さんは、「看護師時代、被曝は線量が増えれば、増えるだけリスクが高まると習い、厳格に被曝を管理していた。1ミリを超えるということはなかった」と述べ、「事故が起きたら基準が変わり、子どもまでもが、労働者の基準より緩和されるなどあってはならない」と怒りをあらわにした。



「被災者守れない」〜パブコメ呼びかけ
「新勧告案では被害者を守れない。」と静かに語るのは、国際環境NGOグリンピースの鈴木かずえさん。鈴木さんは、「当事者の声を聞かずに作りってしまい、当事者が何に悩んで苦しんでいるかっていうことが全く反映されていない。新勧告案では、そういった苦しんでいる人たちが全く守れない。このままだと守れないので、守れるように、なるべく多くの人に、特に福島の人に、パブコメを出して欲しいと思う」と呼びかけた。

ICRP勧告は被曝防護の基準として、世界各国の法令などに反映される。瀬川氏は「福島原発事故に関する誤った認識が、世界に広められて、世界の原発や原発事故に適用されていくということなので、日本だけじゃない重大な問題」と述べた。



 
緊急勉強会の日程

ICRP勧告改訂ドラフト「大規模原子力事故における人と環境の放射線防護」
ICRP委員を迎えての学習会

日時:9月2日(月)14:00
場所:アカデミー向丘学習室にて(文京区本郷)
  主催:市民科学研究室
https://www.shiminkagaku.org/icrpdraft_20190902/

ミニ学習会「ICRPに意見を送ろう」
日時:9月5日(木) 18:30〜
場所:アカデミー茗台学習室B (文京区春日)
主催:放射線被ばくを学習する会

ICRP新勧告案に関する公開研究会
日時:9月9日(月)18:30~
場所:なかのZERO本館「視聴覚ホール」(中野区)
講師: 濱岡豊さん(慶應義塾大学商学部)解説: 瀬川嘉之さん(高木学校)
資料代: 500円(予約不要)
主催:原子力資料情報室
http://www.cnic.jp/8697

市民科学講座Dコースvol.04
ICRP勧告にパブコメを書いてみる ~原子力事故対応に関する草案を読み解いて

日時:9月10日(火)19:00~
場所:市民科学研究室(文京区湯島)
主催:市民科学研究室
https://www.shiminkagaku.org/csij_d_seminar_04_20190910_segawa/

セミナー:何が問題? 放射線防護の国際勧告改定案」
日時:9月11日(水)18:30~
場所:郡山市民交流プラザ第2会議室 (郡山市)
主催:ひだんれん、フクシマ・アクション・プロジェクト、国際環境NGO FoE Japan
http://www.foejapan.org/energy/fukushima/190911.html
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放射能嫌いは「認知バイアス」原子力規制委員がメール(2019年7月21日)
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