2012/07/17 - 18:44

国会記者会館の屋上使用をめぐり、仮処分申し立て

非営利のインターネットメディアOurPlanetTVは、7月17日、国及び国会記者会に対して、国会記者会館屋上での撮影を求める仮処分の申し立てを行った。OurPlanetTVは、毎週金曜日に官邸前で行われている「反原発抗議行動」の様子を撮影するため国会記者会館屋上への立ち入りを求めてきたが、管理にあたっている国会記者会より、記者クラブに所属していないとの理由で拒否されていた。今週20日頃に、双方の言い分を聞く審尋が行われ、29日までには処分が出る見込みだ。
  
OurPlanetTVの白石草代表は、「「言論の自由」をめぐる問題は、言論で対抗するのが本来の姿だと思っているが、毎週、目の前で起きている出来事を撮影できない状況が続いており、従来のような交渉で待つことは難しい。やむを得ず、仮処分の申し立てに至った」として、「この申し立てをきっかけに、取材や報道の自由がより広がることを望む」と話した。弁護団によると、国会記者会を相手に、建物の立ち入りなどを求める裁判は極めて異例という。
 
国に対する申立書(PDFファイル)
国会記者会に対する申立書(PDFファイル)
証拠
http://www.ourplanet-tv.org/files/120717shouko.pdf
 

           国会記者会館屋上での撮影許可に関して
 
  OurPlanetTVは日本では数少ない非営利のインターネットメディアである。市民のまなざしを大切にしたメディアをつくりたいと2001年に設立。刑務所における受刑囚や野宿者の問題、環境問題など、既存のテレビ番組などでは取り上げられにくい社会問題に掘り起こすべく、これまでに1000本近い番組を配信してきた。可視化されにくい人びとの声を伝えるために、市民によるデモや抗議行動も重要な「ニュース」として取り上げていることも大きな特徴である。
 
 野田総理大臣が大飯原発再稼働を宣言した6月8日以降、この決定に異議を唱える声は日増しに強まり、毎週金曜に夜に官邸前で行われている抗議行動は、大きな盛り上がりを見せている。私たちは6月に入って以降、ほぼ毎週のようにその熱気を伝え、視聴者の知る権利に応えてきた。マスメディアによる報道が少ない中、市民のカンパによって空撮用ヘリコプターを飛ばすプロジェクトも生まれるなど、今やひとつの社会現象となっている。
 
 組織されていない市民が国会前の道路に溢れ、思い思いに表現活動を行うといったことは、戦前戦後を含め、日本の歴史上においては初めてのことである。その人びとの息吹や動きを間近に俯瞰して撮影できる国会記者会館の屋上からの撮影は、市民のうねりを記録し、発信してきたOurPlanetTVにとって欠かすことができないものと考えている。そこで、国会記者会館を管理する国会記者会に屋上への立ち入りを申し入れたが許可されず、今後の見通しに関しても、明確な回答は示されなかった。
 
 国会記者会館は、衆議院が国会記者会館に無償で提供している公的な建物で、国会記者会がその管理を委任されている。現在の国会記者会館は1969年に建設されているが、もともとは、1890年(明治23年)に遡る。当時、帝国議会が新聞記者の国会取材を禁じたため、在京各社の議会担当が「記者団」を結成。取材用の傍聴席を確保したことなどが、現在の国会記者会や記者クラブの源流である。いわば、国会記者会館をはじめ、記者クラブが、国民の知る権利に資するために、国会記者会館をはじめ、公的な施設を無償提供されたということができる。
 
 ところが、国会記者会は、現在、自らは報道や取材の自由をもって国会記者会館無償貸与の正当性を主張する一方、インターネットメディアやフリーランスに対しては、排除する姿勢を貫いている。こうした対応は、「真に報道の自由のために活用しているのか」「適正な管理とは、既得権を保持することなのか」といった疑念を生み、これまで歴史を重ねてきた国会記者会館の正当性を、自ら脅かしていると言わざるを得ない。
 原発問題やデモ報道に関して、現在、多くの市民が、記者クラブに所属する既存メディアが十分な内容を報道していないとして不服に感じている。その中にあって、記者クラブは加盟していない新興のインターネットメディアがこれらの報道を主導する役割をしてきたのは他でもない事実であり、その筆頭であるOurPlanetTVに対する施設利用排除は許されざることと考える。実際、OurPlanetTVなどのネットメディアを排除しておきながら、屋上に上がることのできる記者クラブ所属のメディアが、その場所から撮影した写真や映像を十分に報道していない。
  
 国会記者会館の屋上使用を認めない国会記者会の今回の対応は、台頭するネットメディアに対する嫌悪感や危機感の表れであり、同時に、120年にわたる既得権を脅かされることへの恐れに他ならず、不正な目的による競争妨害である。国民の知る権利に資するといった目的に合致する範囲において、国有の施設が等しく使用できるよう求めるものである。
 
                               2012年7月17日
                          特定非営利活動法人OurPlanetTV
                                  代表理事白石草
 

 

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