2013/09/18 - 19:50

首長発言も黒塗り〜線量基準策で住民置き去り浮き彫り

復興庁は今年4月、福島原発事故に伴う避難区域の住民帰還を促進するために、「線量水準」をテーマにした課長級レベルの会合を開催し、住民の健康不安を払拭するための材料集めに取り組んできた。OurPlanetTVが情報公開請求を行ったところ、議事録は作成されておらず、110枚にのぼる資料もほぼ不開示だった。被災自治体首長の発言も真っ黒に塗りつぶされるなど、帰還政策を推し進める中で、住民が置き去りにされている実態が浮かび上がった。

 

同会議は、2月17日に開催された「原子力自治体、福島県と国との意見交換会」で、被災自治体の首長からの発言がきっかけで設置された。首長発言を受けて、根本復興大臣は、3月8日の原子力災害対策本部会合で、「線量ごとの防護策」について原子力災害対策本部に年内に考え方をまとめるよう要請。検討にあたっては、科学的な立場から、原子力規制委員会の関与を求めていた。
 
根本大臣の発言についてはホームページ上で公開されているものの、意見交換会における首長の発言は全て非公開となった。国と自治体間の会合での首長発言が、情報公開で不開示とされることは極めて異例。この日、福島県の佐藤雄平知事や飯舘村の菅野村長は、帰還を早めるために、年間1ミリシーベルトという除染目標は達成が難しいとして、放射線量の新たな安全基準の策定を政府に要請していた。
 
多くの住民が年間1ミリシーベルト以下での生活を求めている一方で、住民の要望をおきざりにしたまま、首長と国の間の議論だけで帰還政策が進められている格好だ。同会合で各省庁で検討した内容は、9月17日に始まった原子力規制委員会の「帰還のための安心安全対策検討チーム」に引き継がれ、今後、数回の検討を経て、12月前に線量の考え方をとりまとめる見通しだ。第1回目の検討チームで政府が公表した「線量水準の考え方」では、避難基準はこれまでどおり年間20ミリシーベルトとし、これまで除染目標だった年間1ミリシーベルトは、数十年以内に達成すればよい長期的な目標と位置づけられた。
 
住民に明かされないままに進む「線量基準」の検討。子ども被災者支援法の線量基準が示されなかった背景には、除染目標を1ミリから緩和し、具体的な目標数値をなくした9月10日の環境省の除染見直し方針と整合性をとるためと見られる。
 
線量水準に応じた防護措置のあり方に関する関係課長打ち合わせ
2013年4月4日 第1回
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130404bougo01.pdf
2013年4月17日 第2回
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130417bougo02.pdf
2013年6月17日 第3回
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130617bougo03.pdf
2013年6月28日 第4回
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130628bougo04.pdf
 

  

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