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甲状腺がん「被曝の影響、否定出来ず」〜疫学専門家インタビュー

投稿者: ourplanet 投稿日時: 水, 03/06/2013 - 15:37
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福島県民管理調査の検討チームは先月13日、2011年(平成23年)に甲状腺検査をおこなった3万8114人のうち、3人の子どもが甲状腺がんであることを発表した。このほか、細胞診断で、7人が悪性または悪性疑いであることも明らかにした。もともと100万人に1人か2人程度とされている子どもの甲状腺がん*。疫学的に見ると、この数値は、いったいどんな意味を持つのか? 疫学を専門とし、『医学と仮説―原因と結果の科学を考える』の著者でもある岡山大学大学院環境生命科学研究科の津田敏秀教授に話を聞いた。
  
甲状腺がん3人を疫学的にどうみるか?
 
津田教授によると、比較的稀な病気が、ある一定のエリアや時間に3例集積すると、「多発」とするのが、疫学の世界では常識だという。今回のケースは、わずか38,000人の調査で、1年の間に3例もの甲状腺がんが発生しており、「多発」と言わざるを得ないと断言する。
 

 
ただ、福島県立医科大の説明によると、甲状腺エコーの精度が優れているために、事故前から微小ながんが発見されただけだと説明している。これについて津田教授は、「大人と子どもを比較できない」とした上で、今回の3例は既に手術を終えいるうえ、大きさは平均15ミリと発表されていることから、通常10ミリ以下を指す微小がん*などと言い出すのはおかしいと批判。また、疫学者の間では、今回のケースは発生率で計算すべきという意見が有力だとしながらも、有病期間を7年や10年といった長い期間に設定して算出した有病率でも、なお「多発」であると分析した。
 

 
19歳以下の甲状腺がん発生数(出典:国立がん研究センターがん対策情報センター)
http://www.ourplanet-tv.org/files/C73data.pdf
甲状腺微小癌(木下誠一)
http://www.epu.ac.jp/uploaded/attachment/1014.pdf
  
厳密に計算する〜ポアソン分布の限界値
 
がんのように、発生率が低いものを統計学的に考察する際、ポアソン分布という確率分布を用いるという。ポアソン分布は、「平均がん患者数(対象者数×がん発生率)」が示す分布だ。がん発生率=平均がん患者数÷対象者数となり、今回のように3例だと、0.818例から8.808例という95%信頼限界を取る。平均有病期間7倍というやや長めの値を仮に当てはめても、有意差のある多発となる。
 

 
「多発」の持つ意味
 
今回、甲状腺がんが確定した3人のほか、細胞診断によって7人に悪性または悪性の疑いがあることが発表されている。甲状腺がんの場合、擬陽性と偽陰性がそれぞれ10%ある。このため、福島県立医科大は、今後、手術を終え診断が確定てから全てのデータを発表するという。がん治療学会の「甲状腺がん診断ガイドライン」によると、偽陽性が生じる割合その多くは,濾胞性腫瘍の場合で、手術によって切除し、組織細胞を病理診断するまで、腺腫様甲状腺腫かどうかの判別がつかない。
 
こうしたことを考慮した上で、この7人について質問したところ、津田教授は、確率的に考えると6.3人が甲状腺がんと診断される可能性があり、これまでに3人とあわせると、甲状腺がんは9人または10人になると回答。また、細胞診断を終えて通常診療になっている60人余りの中に、偽陰性で、甲状腺がんと診断されていない子どもが10%いることも指摘した。
 
*がん治療学会 甲状腺がん 診断ガイドライン
「細胞診の感度・特異度は?」
http://jsco-cpg.jp/guideline/20.html#cq8
「濾胞性腫瘍」
http://jsco-cpg.jp/guideline/20_2.html#cq21
 
「被曝の影響なし」断定は不可能
 
今回、福島県立医科大の山下俊一教授や鈴木真一教授が、子どもたちの甲状腺がんについて「被曝の影響ではないと思う」と全く対策をとっていないことについて津田教授は、「被曝の影響がないと断定する材料は全くない」と批判。「もし、被曝と関係がないとしたら、「原因不明の多発」ということになる。それこそ、すぐに拡大調査すべき内容」と指摘する。
 
また、県民健康管理調査の座長を務めている山下俊一氏の論文に掲載されているデータ*でも、「よく見れば翌年から、甲状腺がんの数値があがっているように見える」と指摘。「感染症でも食中毒でも、通常、このような「多発」が確認されたら、どこの行政でも何か手を打つのが基本。今回に限って、それが全く行われていない。既に調査が行われている今回のようなケースでも、「多発」が確認されたら、調査の頻度やエリア等、様々な角度から見直しをする検討しなければならない」と強調した。
 

 
被爆体験を踏まえた我が国の役割-唯一の原子爆弾被災医科大学からの国際被ばく者医療協力(山下俊一)
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm
 
関連記事
福島県甲状腺検査~3人が甲状腺がん、7人悪性疑い
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1532/
関連資料
「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果等について(2月13日)
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250213siryou2.pdf
国立がんセンターがん情報サービス
http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html#03
参考文献
医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) 津田 敏秀 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4000295845/ref=cm_sw_r_tw_dp_9e3nrb0A7E9EA
 



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