福島第一原発事故
2013/08/21 - 23:12

甲状腺がんデータに大幅ミス〜福島県民健康調査

東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県民健康管理調査の甲状腺検査に関し、6月5日に開催された「第11回検討会」の配布資料の中に記載されていた甲状腺がんに関するデータが大幅に誤っていたことがわかった。福島県は、インターネット上で公表していたデータを差し替えるなどの対応を行った。
 
誤りがあったのは、今年6月5日に開催された「第11回福島県民健康管理調査検討委員会」で報告された甲状腺がんのデータ。甲状腺がんの細胞診結果と悪性または悪性疑いと診断された28人のデータグラフの年齢や性別にの大半が誤っており、修正箇所は全部で18カ所にのぼる。
 
        6月5日に配布された資料(抜粋)
 

       8月20日に差し替えた資料(抜粋)
 

 
県立医大によると、福島県が、第12回の検討委員会資料の数値に誤りがあることを指摘。8月20日に開催された検討委員会までに、資料を差し替えたものの、同検討委員会終了後に、同じデータを含んでいる第11回の内容についても精査したところ誤りを発見した。このため、20日の深夜に、インターネット上の資料を差し替えたという。
 
大幅なミスが生じたことに関して、県立医大は21日、原因の究明に追われた。まる1日かけて、関係者にヒヤリングなどを実施した結果、資料作成にあたった担当者がグラフを作成する際、単純に「二次検査時点の年齢」から2年をマイナスしたものを「震災当時年齢」としていたほか、データ加工者のソートエラーにより年齢と性別がずれてしまったことが判明したという。なお、28例の大幅なミスはあくまでも事務的な作業上生じたもので、元データに誤りはないとしている。
 
今回のミスを受け、医大は今後、データ精査の重要性の認識を徹底していくとともに、日常的にデータ作成時のダブルチェック体制を確立していくとしている。さらに、業務内容と責任体制を明確にしたチームを構成し、思い込みやうっかりによるミスの低減を図っていくとする。
 
医大をめぐっては、同甲状腺検査に関しては、2012年の6月には、阿部正文副学長が「必ず誤診が起こる」と発言するなど、恒常的に人材不足が起きている。OurPlanetTVが行った情報公開などでも、誤った資料を開示するなどのミスが起きており、大規模な県民健康管理センターの業務に関して、十分な体制が確立していないことが裏付けられた格好だ。
 
また、今回、誤りがあったデータは、県が実施している甲状腺検査において、悪性と診断された子どもたちの年齢や性別を整理した唯一の資料で、福島県立医大で甲状腺検査を担当しいる鈴木真一医師らが、被曝影響などの評価に使用していたという。甲状腺がんは通常、女性の患者が圧倒的に多いほか、チェルノブイリでは、小さな子どもも多数発症したことから、性別や年齢のデータは極めて重要な指標であり、疫学的な評価体制にも疑問が残る。
 

 

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