福島第一原発事故
2014/02/18 - 12:44

「日本版エートス」本格始動へ〜帰還促進に向けリスコミ強化

復興庁は18日、原発事故による健康影響への不安低減策として、「帰還に向けた放射線リスクコミュニーションに関する施策パッケージ」を公表。個々人の不安に対応するため、地元人材の活用し、車座や一対一の少人数によるリスク・コミュニケーションを強化する。

この施策パッケージは、原発事故の旧警戒区域の避難解除に向け、住民の早期帰還を促進しようと、環境省と復興庁がまとめたもの。地元の住民が「依然として放射線による健康影響等に対する不安を抱えている」として、「国際的な知見や線量粋人に関する考え方を、分かりやすく伝える」ことが急務だとして、国が積極的に不安解消策に乗り出す。

同パッケージの取りまとめを行った復興庁の秀田智彦参事官は、国が表にでると「国の都合の良いように説明している」などと指摘する声があると紹介。地域にとけ込んでいる地元の方をリスクコミュニケーション人材として育成したいと述べた。また、チェルノブイリ原発事故後、EUがベラルーシの一部地域で実施した「エートス・プロジェクト」などを参考にした、車座などによる少人数のリスクコミュケーションを強化。「講義」形式ではなく、講師を囲んでの親密な対応を推進する。地域には相談拠点を設け、相談員も配置する。

これらリスコミを進める際の手引書として、10の省庁が連携して「放射線リスクに関する基礎的情報」を作成。各自治体や相談員などに配布する。同手引書は、「100ミリシーベルト以下の被ばく線量では、被ばくによる発がんリスクは小さい」と説明。去年10月に国連科学委員会(UNSCEAR)が公表した「福島第一原発事故の放射性被ばくによる急性の健康影響はなく、また一般住民や大多数の原発従事者において、将来にも被ばくによる健康影響の増加が認められる見込みはない」との評価を引用している。巻末には、この手引書にアドバイスを寄せた専門家の名前がずらりと並び、その数は54人にのぼる。同手引書は初回3000部を印刷すものの、基本的にはインターネット上に公開し、情報が更新される度に内容を見直すことにしている。

これらの施策について、記者からは「100ミリ以下はがんは増えないというのは政府の見解か」「リスク・コニュケーションを強化することによって、かえって政府への不信を高めるのではないか」など質問が殺到。福島県の地元紙記者は声を荒げながら、「これによって、被ばくを我慢しろというのか」「健康への不安を抱えて生きるのはバカだと言いたいのか」「福島県に放射性物質が降ったという環境に置かれている現状をどう説明するのか」と厳しく追及した。

政府は、旧警戒区域の避難解除に向け、福島県に対し新たに512億円(平成25年度補正)、1087億6100万円の「福島再生加速化交付金」を積み増す。この一部なども、相談員の配置など新規のリスク・コミュニケーション対策に充てられる。対象地域は、避難指示を受けた12市町村が中心。それぞれの回数や規模、人数など詳細の検討はこれからだとしている。

「帰還に向けた放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/201402171759…
「放射線リスクに関する基礎的情報」
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20140218_bas…

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