福島第一原発事故
2014/04/21 - 21:52

帰還の切り札だった「個人線量」半年公表せず〜支援チーム

東京電力福島第一原発事故に伴う避難者の帰還に向け、内閣府原子力被災者生活支援チームが19日、田村市と川内村、飯館村の3地域の個人被曝線量に関する最終報告書を公表した。しかし、支援チームが「個人線量計の傾向」に関する報告を、去年10月に受けていたものの、その後、半年間以上公表していなかったため、報道陣からは厳しい質問が相次いだ。

この報告書は去年8月、内閣府原子力被災者生活支援チームが、避難解除される地域住民の不安払拭のために、空間線量と個人線量の関係性について、放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構に調査を依頼していたもの。2機関は田村市都路地区と川内村、飯舘村の四十三カ所で、ファントムと呼ばれる模型と職員が線量計を身につけて計測を実施し、個人線量の値が空間線量の約7割になる傾向があるとする中間報告を去年10月作成していた。

支援チームが同報告書を10月11日に受け取っていたにも関わらずこれを公表せず、更に、当時、原子力規制委員会で開催されていた「帰還に向けた安心安全に関する検討チーム」でも、調査自体の存在を報告していなかった。「検討チーム」は、9月17日と10月3日、16日、11月11日の計4回開催されており、10月3日には、福島県内の市町村が実施していたガラスバッチの計測結果を公表し、「個人線量というものを正確に把握し、きめ細やかな安全・安心対策に つなげることが重要というふうに考えられる」と説明していた。

18日には最終報告として、個人の属性を農業、林業、教職員、事務員、高齢者に5分類した上で被曝量を、NHK放送文化研究所の生活調査の生活パターンを利用して推計。今年7月に品解除を目指している川内村では、避難指示解除準備区域の農業従事者が年3ミリシーベルト。居住制限区域の林業従事者で5.5ミリシーベルトだった。また、飯舘村は、林業が8.8~17ミリシーベルト、高齢者が4.9~16.6ミリシーベルトと高線量が目立った。

支援チームは、同件についてのマスメディア報道を受けて、中間報告を経済産業省のホームページに掲載。支援チームの田村厚雄参事官は「昨年の推計値は調査途中のもの。線量の高い所があったから公表を見送ったわけではない」と弁明した。避難や帰還の方針を決定している内閣府原子力被災者支援チームは、基本的に経済産業省の出向者が担っている。

18日公表した最終報告書
「東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に係る個人線量の特性に 関する調査」(概要版)
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/radioactivity/pdf/20140418_01.p…
東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に係る個人線量の特性に関する 調査(報告書)
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/radioactivity/pdf/20140418_02.p…
個人線量の推定のための調査事業についての解説
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/radioactivity/pdf/20140418_03.p…
定点における個人線量計等の測定結果を基に複数の生活パターンで推定した個人線量
帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/kikan_kentou/index.html

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