福島第一原発事故
2014/08/25 - 02:12

甲状腺がんの子103人〜福島で10万人に30人

東京電力福島第1原発事故の健康影響を調べている福島県の「県民健康調査」の検討会が24日、福島市内で開かれ、甲状腺がん悪性と診断された子どもは、悪性疑いも含め103人になった。すでに手術を終え、甲状腺がんと確定した子どもは57人に達した。

2011年秋から開始している福島県内の甲状腺検査。福島県内のすべての地域で1回目の検査を終了し、事故当時18歳以下36万人のうち約8割に約29万6000人が受診した。県内では最も遅い時期に一次検査を実施した会津地域の2次検査結果も8割以上が判明し、2次検査の穿刺細胞診で悪性または悪性疑いと診断された人は104人となった。そのうち、すでに手術を終えたのは58人で、一人は良性結節だったものの、乳頭ガンが55人、低分化がんが2人と確定した。

福島県立医大は今回、地域別の発症率を算出した。それによると、悪性および悪性疑いの割合は、県全体で10万人に30人。地域別では浜通りでは35.3人、中通りで35.4人、会津で27.7人となった。1991年から1996年まで、チェルノブイリの汚染地域で甲状腺がんのスクリーニング検査を行った長崎大学のデータによると、ジトーミル州のコロステンで10万人に31人、キエフで22人とされており、福島の結果はチェルノブイリの汚染地域に匹敵する割合となっている。


高村昇(長崎大学原爆後障害医療研究所)「チェルノブイリ原子力発電所と 健康影響」(2013年6月24日)
http://www.jrsm.jp/shinsai/kouen-1_takamura.pdf

検査開始当初は、100万人に2〜3人とされていた子どもの甲状腺がん。検討会では、スクリーニング検査による過剰診断との声も上がる中、星座長から「甲状腺検査に関する論点整理」と題する中間まとめが出され、検査の目的や検討会の役割について再検討すべきではとの問題提起があった。これに対し委員からは、被曝の影響かどうかを解明する必要があるとの意見が出た一方で、あくまでも子どもたちの健康を見守る検査であるべきだとする慎重論も出た。

記者会見・前半

記者会見・後半

資料:
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-16-si…

疫学の専門家・岡山大学の津田敏秀教授のコメント
福島県内の市町村をまとめて甲状腺がん細胞検出例の発見割合を比較すると、会津と二本松市周辺とでは2倍以上の開きがある。二本松市周辺の地域で1年早く検診が実施されたことを考慮するとより大きな開きとなる。福島県内にバラツキがないとの意見があるようだが、これほどの差があれば、スクリーニング効果と説明するのは難しい。



(津田教授の分析 ※地域の区分けは下記地図を参照)

そもそも現在の桁違いに高い発見割合は、チェルノブイリ周辺の非曝露地域等での未成年を対象とした甲状腺がんのスクリーニングによる検出割合と比べると、スクリーニング効果による説明をしたところで、安心すらもたらさない。今回、いわき市での発見例が多くなっていることは、それだけ空間線量率に左右される外部被ばく以外の被ばくの効果も重視すべきことを示している。すなわち、空間線量率が比較的高い県だけでなく、海岸に沿った南の方向も重視すべきである。

チェルノブイリ周辺のベラルーシとウクライナでは、事故後翌年からすでに徐々に多発が起き、事故後4-5年後の大きな多発につながった。この事故後4-5年以前の多発が、福島でも起きていることを示す結果を十分に認識し、医療資源の確保や県外特に南の方角の県での症例把握の体制の整備など、何らかの対策を具体的に検討し、早めに実施すべきだ。

上記の表の見方と分析方法
1年目(平成23年度)対象地域はそのまま、2年目(平成24年度:いわゆる中通り)対象地域は、まとまった人口の地域毎に、中通り北部地区(福島市など)、中通り中部地区(二本松市や本宮市など)、郡山市、中通り南部地区(白河市など)の4地区に分割した。
3年目(平成25年度)対象地域は、2次検診が70%以上進行している市町村に限り、いわき市といわき市を除いた南東地区、および「それ以外の地区」(会津地方と北東地方)に分割し、「それ以外の地区」を内部比較の対照(reference)とした。

外部比較は「有病割合 ≒ 発生率 × 平均有病期間」の公式に基づき、発生率100万人に5人、有病期間を3年を当てはめた。なお国立がん研究センターがん対策情報センター発表データの年齢・性別の甲状腺がん発生率の推計値(1975-2008年)によると、1975年から2008年までの日本における15歳から19歳の年間発生率の平均値は100万人に5人。15歳から24歳の年間発生率の平均値は100万人に11人。2003年から2007年までの0歳から19歳の年間発生率は平均値は100万人に2-3人である。
※「有病期間」とは、検診および細胞診により甲状腺がんが検出可能になった日から、検診がなくても通常の臨床環境で甲状腺がんが診断できるようになる日までの期間。
※95%信頼区間の推定にはポアソン分布を用いた。

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