福島第一原発事故
2017/01/14 - 02:47

「とあるユートピアの物語」~アレクシェービッチ講演

原発事故にあった人々の証言を集めた「チェルノブイリの祈り」などの著作で知られる、ベラルーシのノーベル文学賞作家でジャーナリストのスベトラーナ・アレクシエービッチさんが11月28日、東京外国語大で名誉博士号を授与され、記念講演を行った。直前に訪問した福島の被災地について、「私が「チャルノブイリの祈り」で描いたことと全く同じものを目にした」と述べた。

記念講演「とあるユートピアの物語」(45分)

 

アレクシエービッチさんは学生との対話に先立ち、「とあるユートピアの物語」と題する記念講演を行った。アレクシエービッチさんは、自身特有の表現方法が生まれてきた過程を振り返りながら、これまで話を聞いてきた人々のエピソードを紹介。「一人の話は個人の運命だが、百人の話は歴史になる」と、市井の人々の言葉をすくい上げることの重要さを説いた。

アレクシエービッチさんは、一冊の本を書き上げるまでに、5~6年の歳月をかけるという。1冊の物語を仕上げる間に、耳を傾ける人の数は400人から500人にのぼる。「私の仕事はインタビューではなく、命についての対話」生々しい人々の言葉にこそ魂が宿るとの見解を語った。

学生との対話「福島、チェルノブイリと同じ印象」(15分)

学生と1時間ほど対話では、原発問題や現在のロシア情勢などについて質問が飛んだ。アレクシエービッチさんは原発事故被災地で、避難者に話を聞いた印象などを紹介。打ち捨てられた家屋や見放された避難者の姿をチェルノブイリに重ね、「チェルノブイリ事故と同じく、国は人の命に全責任を負わない」と国のあり方を批判。そのうえで、「日本社会には抵抗という文化がないように感じた」と述べた。

またロシア情勢をめぐっては、アフガン戦争などが美化されつつある現状を厳しく批判。プーチン大統領の進める軍拡政策や言論封殺について、「新たな愛国主義が広がっている」「恐ろしいことが起きている」と憂慮した。そして学生たちに対し、「たった一人であっても、孤独に打ち勝ち、人間らしさを失ってはならないことを理解してほしい。」と語りかけた。  

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