福島第一原発事故
2017/11/29 - 18:49

鈴木元氏が部会長へ〜甲状腺がんの健康影響評価

東京電力福島第1原発事故後に福島県で実施されている甲状腺検査の評価を行う「県民健康調査」甲状腺検査評価部会が30日、福島市で開かれた。評価部会が行われるのは1年10ヶ月ぶりで、甲状腺の病理学を専門とする山梨大学大学院の加藤良平教授以外は全て交代し、座長には国際医療福祉大学クリニックの鈴木元院長が就任した。

福島県避難区域でがん確率高い?
新たに就任した委員が評価を行うのは、2014年度から2015年度にかけて実施された「本格調査(2巡目)」の検査結果。福島県立医大が提出したデータによると、がんやがんの疑いと診断された患者の10万人当たりの地域別の割合は、避難指示区域に指定された13市町村が49.2人で最も多く、中通りが25.5人、浜通りが19.6人、会津が15.5人と、原発により近避難区域が最も高いとの結果が報告された。

これについて、南谷委員が「発見率を解析すると有意差がでるのでは」と指摘。一方、福島医大でデータ解析に携わった安村誠司教授は、「年度による調整をするとデータが変わることを示しただけ。年齢や性別、検査間隔、年齢階級別の1次検査受診率など、さまざまな交絡要因を考慮する必要がある」として、今後解析方法を詳細に議論する必要があると述べるに留まった。

また大阪大学の祖父江友孝教授は、調査の目的について、「子どもたちの健康を長期に見守るために」という内容を変え、「甲状腺に関わる健康被害を未然に防ぐ」という目的、「放射線被害の影響をなるべく早くに明らかにする」という2つの目的を明確に記載すべきではないかと提案した。

評価部会は前回2015年3月に、2011年から2013年の先行調査(1巡目)の結果について、「甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い。」と記載。その原因として、「被ばくによる過剰発生」か「過剰診断(生命予後を脅かした り症状をもたらしたりしないようながんの診断)のいずれかが考えられるとした上で、「被曝の影響とは考えにくく、過剰診断の可能性が高い」との結論づけていた。 鈴木部会長は、2年間の任期中には、何らかの方向性を出したいと述べた。

部会長に就任した鈴木元氏は、放射線医学総合研究所や放射線影響研究所を経て現職。原子力施設等防災専門部会「ヨウ素剤検討会」の委員として2002年、安定ヨウ素剤の服用基準を100ミリシーベルトと決定した。WHOでは当時、チェルノブイリ原発事故による小児甲状腺がんの過剰発生を受け、18歳以下の子どもに対する安定ヨウ素剤の投与指標を100ミリから10ミリグレイに変更していたが、その基準を採用しなかったため、福島原発事故時、一部の自治体を除き、子どもたちに安定ヨウ素剤が投与されなかった。

このほか、鈴木氏は環境省の「住民の健康管理のあり方に関する専門家委員会」の委員として福島原発事故による健康影響を強く否定。さらに福島からの避難者が起こしている京都原発賠償訴訟において、原告から提出された専門家意見書に反論し、福島原発事故による健康影響は起きないと主張しているほか、長崎の被爆地拡大訴訟でも国側の証人として法廷で原告らの被曝を否定している。

資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-b8.h…

新メンバー
阿美弘文(大原綜合病院外科主任部長)福島県病院協会推薦
片野田耕太(国立がん研究センターがん対策情報センター がん統計・総合解析研究部部長
加藤良平(山梨大学大学院人体病理学講座教授 )日本病理学会推薦
鈴木元(国際医療福祉大学クリニック院長 )日本放射線影響学会 推薦
祖父江友孝( 大阪大学大学院医学系研究科教授)日本疫学会推薦
髙野徹(大阪大学大学院内分泌代謝内科学講師)日本甲状腺学会推薦
南谷幹 史(帝京大学ちば総合医療センター小児科学病院教授 )日本小児内分泌学会推薦
吉田明(神奈川県予防医学協会婦人検診部部長)
日本内分泌外科学会/日本甲状腺外科学会推薦


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