福島第一原発事故
2019/01/25 - 21:32

毎時0.23マイクロシーベルトは「数字の一人歩き」〜放射線審議会

国の放射線審議会は25日、東京電力福島第一原子力発電所事故後に政府が策定した基準のうち、食品と除染目標の二つの基準の運用実態や教訓を整理した報告書を公表した。「毎時0.23マイクロシーベルト」といった「数字が一人歩き」したことにより風評被害などを招いているとして、こうした基準のあり方を見直し、個人線量などによる管理に移行すべきとの見解を示した。

報告書は、食品の基準値や汚染状況重点調査地域の指定要件などについて、「この食品は1キログラム当たり100ベクレルを超えているから危険」、「 毎時0.23μシーベルトを超えているから危険」などといった「数字の一人歩き」が生じていると指摘。「年間1ミリシーベルトが安全と危険の境界である」といった誤解が生じ、復旧・復興を阻害するおそれがあると結論づけた。さらに「毎時0.23マイクロシーベルトという数値は除染の目標ではない。」と強調。長期目標の年間追加被ばく線量 1ミリシーベルトは、「除染のみではなく、他の防護策を含めて達成すべき政府全体の目標である」とした。

また放射線防護委員会(ICRP)の2007 年勧告にも言及。「緊急時被ばく」や「現存被ばく」といった状況に応じて「参考レベル」を設けることが勧告されいるものの、日本では法制的な課題があり対応が難しかったとの見解を述べた上で、長期目標の「年間1mSv」が「線量限度」と見なされ固定化してしまったことを反省。「参考レベル」の見直しが困難な中、事故初期段階に設定された基準を、「個人線量」などのデータが蓄積した段階で、新たな基準に切り替えることも重要だと提言している。

宮崎・早野論文は報告書から削除
これらの提言を裏付ける根拠として、放射線審議会ではこれまで、早野龍五東京大名誉教授と宮崎真福島県立医大講師が16年に英専門誌に投稿した論文を活用してきた。しかし同論文は、研究に同意していない住民のデータが使われているなどとして、東京大学に研究不正の申し立てを起こっており、今月8日、著者の一人である早野氏が「同意を得ていない住民のデータを使用した恐れがある」などとする「見解」を公表。これを受け、放射線審議会でも、報告書から削除を決めた。

報告書から削除された部分

「空間線量率と実効線量の関係に関する参考文献」として、同報告書に取り上げられているのは、同論文化と産業総合研究所の内藤航氏の論文の2つのみ。早野氏らの論文は伊達市住民約6万人を対象にした論文だったが、内藤氏の論文は、飯館村の住民38人の個人線量を計測したデータで、対象人数が少なすぎるといった批判もある。

放射線審議会の神谷研二会長は、早野氏らの論文の正当性が認められれば、再度、報告書に盛り込んでいくとの考えを示した。

東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況 における放射線障害防止に係る技術的基準の策定の考え方について
http://www.nsr.go.jp/data/000259695.pdf

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