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【トーチプロジェクト2010】ドキュメンタリー企画賞選考結果

投稿者: ourplanet 投稿日時: 木, 08/19/2010 - 04:36

 トーチ・プロジェクト2010企画賞には国内外より計26の企画が寄せられました。そのうち半分の13が映像制作未経験者によって企画されたもの、ほか13が経験者からの応募でした。
 
 企画内容は、NPOや市民団体などの取り組みや人を扱ったものが9企画、地方の活性化をテーマにしたものが3企画、表現活動・表現者に関わるテーマが4企画、戦争をテーマにしたものが2企画、冤罪事件などの社会問題をテーマにしたものが2企画、その他6企画でした。
 
 今回の選考では特に当事者性の強い企画、コミュニティに根ざした企画に着目し、以下の視点から選考を行いました。
 
(1)これまで、マスメディアなどでほとんど注目されてこなかった事柄に着目したもの
(2)当事者または支援者など、取材対象と取材者がすでに継続的な関係のあるもの
(3)この賞を受賞しなければ、今後、番組化される可能性が低いもの
(4)制作完成・発表に対して、強い意志が感じられるもの
 
 選考に関わったのは、理事のピーター・バラカン(ブロードキャスター)、小池新(共同通信元編集委員)、稲熊伸二(クリエイティブディレクター)、池田佳代(OurPlanetTV代表副理事)、白石草(OurPlanetTV代表理事)の5名とOurPlanet-TVのスタッフ2名の計7名です。
 その結果、企画賞3企画と奨励賞1企画が選ばれました。

企画賞
「人間やってます!」 社団法人 座 奈良ダルクデイケアセンター
「高校生の挑戦」 特定非営利活動法人F-site
「子どもが見つめるカンボジア」 カンボジア・愛センター
 
奨励賞
「A TESTING」大谷清英

◆ 講 評 ◆

『人間やってます!~薬物依存症からの回復施設の日常~』

社団法人 座 奈良ダルクケアセンター
 
(企画概要)
 覚せい剤、大麻など薬物の依存症の人が回復を目指す施設を舞台に、仲間と助け合いながら、薬物をやめていく姿を、内側から描く。
 
(講評)
 今、日本では、薬物依存に関する激しい撲滅キャンペーンを展開されています。マスメディアは、「薬物依存」=「悪」という強いメッセージを受け付けるのみで、「薬物依存症」回復への処方箋について、十分な情報提供をしていない現状があります。
 この企画は、薬物依存症の回復施設を舞台に、仲間と助け合い、人生の楽しみを取り戻していく人々の姿を当事者の目線から追うものです。これまで、アルコールや薬物依存をテーマに、ダルクを取り上げたテレビ番組はそれなりにありましたが、これは、当事者が内側から描く、日本で初の作品になることと思います。過酷な困難を乗り越えながらも、生き生きと暮らそうとする人々の表情を、当事者ならではの視点で記録することに期待します。また、この作品の制作そのものを通じて、多くの方がエンパワーし、社会にインパクトを与えることもまた期待したいと思います。

『高校生の挑戦 ~小さな商店街復興へ。理想と現実に、彼らは…~』

特定非営利活動法人 F-site
 
(企画概要)
衰退する地方の商店街。富山市にある中教院通りもそのひとつだ。行政主導の地方活性化が相変わらずハコモノ計画であることに疑問を感じた高校生が、立ち上がった。
 
(講評)
 「シャッター商店街」という言葉通り、今、全国の商店街が衰退の一途を辿っています。その一方で、ロードサイド型の大型商業施設や新しい地域活性化施設が次々に姿を現し、かつてとは人の流れが変わってしまった地方都市も少なくありません。
 この企画は、夏の夜店などで古くから親しまれてきた富山市の中教院通りを、自分たちの手で活性化しようとする高校生に焦点を当てた企画です。「高校生が街づくりに貢献する」という美談はよくマスメディアで報道されますが、今回の企画では、高校生が行政主導の活性化計画に反旗を翻したために、役所や地元経営者からはもとより、地元メディアからもそっぽを向かれてしまったという点が、選定の重要な決め手となりました。
 地方都市では、地元自治体と地元企業と地元メディアが三位一体となり、地方の実態にそぐわない行政主導の地域活性化計画が遂行されることが少なくありません。名門高校の高校生たちが学校を越えて、活動を広げていけるのか。ぜひ、高校生が自ら主体となって、地域の課題に切り込んでもらいたいと思い、選考しました。

『子どもが見つめるカンボジア』

カンボジア・愛センター
 
(企画概要)
 カンボジアの寺子屋に通う子どもたち自らがビデオを回し、子どもたちの視点で新しいカンボジアの姿を表現する。
 
(講評)
 日本で放送されているカンボジアの映像は「貧しい、かわいそう」というイメージばかり。この企画はこうした日本からの先入観を拭い去り、子どもたち自らの視点で、自分たちの日常の暮らしを表現させてみたいという意欲的なものです。
 今、世界的にメディア教育が進み、子どもたちが自らカメラを回し、自分たちのことを自分たちで表現する大切さが指摘されています。申請者は、カンボジアでカンボジアの子どもが通う寺子屋を運営している非営利団体。大人が押し付ける価値観ではなく、子どもたちの思いやアイデンティティーがきちんと表現できるよう後押しし、子供たちによっての大きな自信につながることを願っています。

奨励賞『A TESTING』

大谷清英
 
(企画概要)
 化粧品の製造過程で実施されている動物実験。EUでは2009年3月に禁止されているものの、日本ではまだ継続されている。動物実験廃止を訴えるNPOと実験を継続する化粧品会社双方を取材し、動物実験を問う。
 
(講評)
 日本では、現在年間2000万頭の動物が、化粧品などの動物実験で命を落としています。しかし、テレビCMや雑誌広告で多くの比率を占める化粧品会社の問題は、マスメディアでの報道が難しい実情があり、日本では十分に知られていないのではないでしょうか。
 この企画は、最近この問題を知った申請者が、マスメディアでは扱えないこのテーマを実現させたいと取材に着手したものです。企業の取材は容易ではないと思いますが、実験の現場を含め、なるべく全体像を示せるよう取材し、社会に波紋を投げかけることを期待します。