オリンピック
2019/02/15 - 16:59

五輪会場の工事現場を公開~一部で遅れ

開催まで1年半を切った東京五輪。東京都は12日、水泳の会場となる「東京アクアティクスセンター」など、5つの競技場と選手村の建設現場を報道陣に公開した。カヌー競技場の工事が7ヶ月遅れとなり、今年7月から始まるテストイベントには一部を仮設施設で対応するなど影響が出ている。

工事現場が公開されたのは、カヌー競技が行われる「カヌー・スラロームセンター」(葛西)、ボート競技の「海の森水上競技場」(中央防波堤)、体操競技場となる「有明体操競技場」(有明)、バレーボールが行われる「有明アリーナ」(有明)、水泳の「東京アクアティクスセンター」(有明)、そして「選手村」(晴海)だ。

「カヌー・スラロームセンター」(整備費73億円、今年12月完成予定)

国内初の人工競技場となる「カヌー・スラローム会場」は、約7割が完成。幅約10m、長さ約200mのコースの基礎がほぼ出来上がった。しかし、管理棟の工事を担っていた会社が経営破綻したため、完成が7ヶ月遅れる。10月に行われるテストイベントに間に合わず、仮設の管理棟で対応する予定だ。

「海の森水上競技場」(整備費308億円、今年5月完成予定)

ボート競技などが行われる「海の森水上競技場」は、最も工事が進んでおり8割近くが完成。この日は、波の影響を受けないようにコースと海を仕切る「締切堤」の工事が進んでいた。東京のゴミ処分場「中央防波堤」に囲まれたエリアに位置し、最寄の「テレコムセンター駅」からは、歩いて1時間というアクセスの悪さが課題だ。

「有明体操競技場」(整備費253億円、今年10月完成予定)

体操やトランポリン、新体操などが行われる「有明体操競技場」。最大の特徴は、国産の木材をアーチ状につなぎ合わせた大屋根。大会後は展示場などとして10年間使用される。

「有明アリーナ」(整備費370億円、今年12月完成予定)

バレーボールが行われる「有明アリーナ」の進捗は5割ほど。約1万5000人を収容することができるが、今回視察した中で最も進捗が遅く、この日は、工事作業員が急ピッチで作業を行っていた。

「東京アクアティクスセンター」(整備費567億円、来年2月完成予定)

水泳会場の「東京アクアティクスセンター」。1万5000人を収容し、大会後も年間100大会の開催を目指す日本最大の水泳場となる予定だ。工事は屋根のリフトアップが終わり、観客席やプールの躯体工事などが進んでいた。都によると、油圧機器大手の「KYB」による免震データ改ざん問題を受けて、免震ダンパーの交換作業に追われているという。

「選手村」(今年12月完成予定)

五輪後には、高層マンションとして売り出す予定の選手村。大会時には、14階から18階の宿泊施設が21棟、商業施設1棟が建設される。工事の進捗は、宿泊棟が約7割で、商業棟は約2割ほど。選手が宿泊する建物の外壁がはっきりと見えてきた。現在、1日に働く作業員の数は、約3000人と新国立競技場の1日の作業員数2500人よりも多い。

三井不動産レジデンシャル株式会社など12事業者が整備に関わり、大会後は新たに高層マンション2棟を建設し販売する。都がこの事業者に通常の10分の1の価格で土地を売却したとして、2年前、都民33人が事業者と東京都を訴える裁判を起こしている。

大会後、選手村を住宅にして販売する事業者のPR動画

大会後の施設運営は赤字

都は全体で8会場を整備し計1828億円を負担する。しかし都の試算によると、大会後にコンサートやイベントで貸し出す「有明アリーナ」以外は、赤字運営となる。567億円で整備する「東京アクアティクスセンター」は、年間で約6.4億円の赤字運営になるほか、「カヌー・スラロームセンター」は約1.9億円、「海の森水上競技場」も約1.6億円の赤字運営となってしまう。都は、大会後にネーミングライツの導入や、企業広告の獲得、施設の稼働率向上などを目指しているが、改善できる見通しはない。

今年の夏にはテストイベントが開催

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、今年の7月から、屋外競技を中心にテストイベントを実施する。本番までに50のテストイベントを行い会場や運営のチェックを行う予定だ。

関連資料
東京2020テストイベント日程
https://tokyo2020.org/jp/games/sport/testevents/
東京都・新規恒久施設の施設運営計画
http://www.2020games.metro.tokyo.jp/c9a17b5ba02b21aa541715a974e82c9c.pdf

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