福島第一原発事故
2014/06/10 - 16:14

リンパ節転移が多数~福島県の甲状腺がん

東京電力福島第一原子力発電所による健康影響を調べている福島県民健康調査の検討委員会で10日、甲状腺がんに関する専門部会が開催され、スクリーニング検査によって、多数の子どもが甲状腺手術を受けていることについて、前回に引き続き過剰診療につながっているかどうかで激論となった。議論の過程で、手術している子どもに、リンパ節転移をはじめとして深刻なケースが多数あることが明らかになった。

福島県民健康管理調査では、原発事故が起きた当時18歳以下だった子ども36万人を対象に甲状腺の超音波診断が行われている。事故から3年目となる今年の3月末までに、対象となる子どものうち約29万人が受診。2次検査で穿刺細胞診を受けた子どものうち90人が悪性または悪性疑いと診断され、51が摘出手術を実施。50人が甲状腺がんと確定している。

専門部会では、疫学を専門とする東京大学の渋谷健司教授が、この結果について、スクリーニング効果による過剰診断が行われている可能性があると指摘。また、放射線影響との因果関係を論ずるためには、比較対照群を設けるなど、制度設計の見直しが必要であると主張した。

これに対し、手術を実施している福島県立医大の鈴木真一教授は、「過剰診療という言葉を使われたが、とらなくても良いものはとっていない。手術しているケースは過剰治療ではない」と主張。
「臨床的に明らかに声がかすれる人、リンパ節転移などがほとんど」として、放置できるものではないと説明した。(動画の52分40分頃)

渋谷教授は「しかし、健診して増えたのなら、過剰診断ではないか。リンパ節転移は何件あるのか」と追及すると、鈴木教授は「取らなくてよいがんを取っているわけではない」と繰り返しつつも、「ここで、リンパ節転移の数は、ここでは公表しない」と答えた。(1時間35分頃)

こうした議論を受けて、日本学術会議の春日文子副会長は、現在、保健診療となっている2次検査以降のデータについても、プライバシーに配慮した上で公表すべきであると主張。また1次データの保存は必須であると述べた。

これについて、広島県赤十字病院の西美和医師も「部会として希望する」と同意。また、渋谷教授もデータベースを共有する必要があるとした。座長の清水教授もその必要性を認めたため、次回以降、手術の内容に関するデータが同部会に公表される方向だ。

甲状腺検査評価部会ノーカット版

記者会見

部会終了後の記者会見で、記者からは改めて「放射線影響との因果関係」について検証しないのか。また、見解を示すめどはいつなのかについて、質問が殺到。福島県および清水座長は、次回以降、詳しく検討するとしたうえで、会津地方の2次検査結果がおおむね明らかとなる7月以降となるとの見方が示された。

また、福島県の調査では、男女比が通常は1対8程度であるのに対し、福島県の調査では、男性が36%を占めていることについて、甲状腺の専門家でもある清水教授は「チェルノブイリもそうだが、今回、確かに男性の比率が多い。ただ理由は分からない」と見解を示さなかった。

配布資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-b3.htm…

鈴木真一教授の主な発言

鈴木:プロトコルの件についてもごもっともなことで、その都度検討したいと思います。あと先ほど過剰診療の件ですけど、我々個の検診を始める前から通常の住民や皆さんへの説明を言葉の中で多く出ることはすでにわかっていると説明はしております。そのなかで今、過剰診療という言葉が使われて、非常に心痛むんですけど、我々この甲状腺の治療を診断をするなかでも、既に前回も申しましたけど、日本では1990年代に、超音波ですることは過剰診療につながるので慎重にしようと。で、今回は検診をどうしても福島の状態でせざるをえなくなったときにどうしようかということで、診断基準を作ったんです。で、過剰に取り上げることをしないで、5ミリまでにして、5ミリから10ミリも先ほども申しましたように、本当に必要な人だけ細胞診します。
実際に細胞診をして、悪性ないし悪性の疑いが出ても、通常の臨床のレベルで過剰診療といわれるものに関して、あえて治療しているということはございません。通常のレベルで必要なものは治療を進めますし、通常の診療レベルで経過観察しているものは同じように経過観察を進める、進めていく。そこの基準に関しては同じレベルです。
ただ、発見動機が健診という超音波診断になっていると。ですから結果は、発見率が違うということはあるのでそれに対して今後、どういうふうにするかというのはまた違う。対象になっている福島県民の状況が違いますので、そこは今後、検討の余地が必要かと。あとは清水先生が仰られた話につながるんですけど、県の我々みんなが心配して、子どもを長きにわたって見守る検診をやろうということが目的ですので、完璧に科学的に対照例を作るとか、そういうことをするのではなくて、子どもたちの健康を長きにわたって見守るという中での検診ですので。その中でこういう貴重な意見をいただいたことを無視するわけではなくて。ここから盛り込めるものは盛り込みながら考えていきたいと思いますが。それは私個人としての意見ですが。ありがたいことで、具体的に色々教えていただければと思います。

渋谷:みなさんが県民の健康のためにやっているのは承知しています。厳密な基準を作っていることは過剰診断がないと言えるのは、どういうエビデンスなのか。(略)

鈴木:技術的なことなんで私から答えさせていただきます。ええと、渋谷先生の仰ることはもっともなんですが、二次検査にまわる基準が5ミリなんですけど、細胞診するかしないかは、5から10ミリの間っていうのは、今度は超音波の診断基準とは別にあるんですけど、それで悪性の項目が6ないし7項目あるんですけど、それが全部揃ったという非常に厳しい条件の人。全てが強く悪性を疑うっていう人に細胞診を勧める。で、基本的には5から10(ミリ)の間はきわめて細胞診をしないっていうのは母集団ってことで。

渋谷:私がいう過剰診断というのは、ガンだとしても将来悪さをしないもんをさしているのだが。

鈴木:そこはその次になりますが、将来までそれを言い切れるサイズというのは、今のところコンセンサスが言われているのは5ミリまでで、5から10はケースバイケース。要するに、5から10(ミリ)でも転移している人もいれば、それは臨床的に、今は、世界中どこでもとらなくちゃいけないということだし、とらなくてもいい。ですからいま言ったような基準があって。そのなかでより悪性度の高いと思われている人だけ5から10でやる。
そうすると実際はほとんどがあのリンパ節転移がすでに見つかっている。そういう他の条件があることで、決して過剰にならないと。通常の診療でも治療、当然大人でも、通常、治療を勧められる範囲だってございます。ですから、とらなくてもいいものを子どもだから心配させて取っているということではございません。通常の診療でも、誰でも見つかれば取るだろうものです。

渋谷:通常でも過剰診断というものは言われているわけで、ですから堂々めぐりなんです。

鈴木:そうじゃなくて、臨床的に明らかにもう転移をしている。明らかに声がかすれているという人は治療しなくちゃいけないんです。

渋谷:この小児もほとんどそういうケースなんですか?

鈴木:5から10(ミリ)の間での手術。特に小さいほうでなった人はそういう条件でなった人、10に近くなればなるほど、そういうのはなくなってくる。

渋谷:多分、過剰診断と擬陽性を混同されているという印象があります。私が言っている過剰診断は病理組織学的にはガンですけれども、健診もなければ症状も出ずに、診断されなかっただろうというそういうガンのことをさしているわけですね。(中略)現在の健診で過剰診断、過剰治療につながっているという場合にはですね、子どもたちに傷を残すわけですよね。心の傷も残しますし。ホルモン治療も必要ですし、コストもかかるわけですよね。(略)

鈴木:渋谷先生にこれから何度も理解を求める話をしなければならないと思うんですけど、過剰という言葉を容易に使われているんですけど、これが過剰であるということがあれば大変問題なので、先ほどから胸を痛む思いで、過剰という言葉を百も承知でこの世界で生きてきて、今回事象があったとき、どういう基準で検診するかという中で、こういう基準を日本の専門家の間でコンセスサスを得た中でやってるのですが、取らなくてもいいものを過剰な簡単に説明できると言えば、生存率だけで取らなくてもいいと見れば、死なない人も、あとで見つかっても今まで死んでませんけど、ただ我々、清水先生もご存知の通り、声を失うほどになってから見つかる、また見つかっても生存率のデータだと10年〜20年では結果はでないけど、最終的に死に至る人がどうしても進んでくると出てくるというのが、この甲状腺がんであって、このレベルで取れた人が決してQOLが傷も小さいし、色んな意味で悪いことではないと。
しかも、何度も言いますけど、通常の診療でこれを、こういうガンが見つかりました。って、普通これは取らないけど、心配だから取りましょうね、というレベルのものを取っているわけではないことを何度もお伝えしたい。その中で、擬陽性ではなく、5〜10(ミリ)でもきわめて限定した人、治療が必要だという人を細胞診している。その中で、陽性が出た人の中で、臨床症状とか色んなものを併せて、判断した中で、ご両親等々の同意を得た人が治療をしている。決して、不安をあおって、見つけたものは取る、逆にそういうことがないように、基準を設けて多分、臨床的には分からないくらい小さいものでも、細胞診すればもっとガンが出る可能性は理論的にはあるんですがそれは本当に治療が必要なのかどうか疑問をもたれるんで、そういうものは、敢えて経過観察にしている。そういうものは、自ずと必要なものはちゃんと進行してきて、通常の診療、検査でわかると。見守るというのはそういうことでございます。取らなくてもいいものを取っているわけではないということで。

渋谷:治療しなければならないケースとは?

清水:(略)

鈴木:将来、生命、予後、寿命をまっとうできるような治療をしなくて良いがんとおっしゃいましたけど、いわゆる剖検例(ぼうけんれい)で、乳頭ガンのほとんどは5ミリ以下なんですね。で、5ミリ以下でもガイドライン但し書きをつけておりますから、明らかに肺、遠隔転移があるとか、リンパ節転移があるとか家族遺伝性が濃厚とか、但し書き以外の人は5ミリ以下は(手術を)避けようというのが一般的です。ただし、5〜10の人に関しては、臨床症状的に取らなければならないもの、取らなくていいものとあるかもしれないけども、そういうものを一例一例、明確に分かれるわけではない。そこはグレーゾンですので、じゃあ、それを全部根こそぎとっているわけではなくって、先ほども言った通り、そこで敷居を高くして、明らかに悪性度の高いものや場所の悪いものそういうものだけを選んで細胞診をして、場合によっては手術になっているということです。

渋谷:世界的なデータを見ると、検診をすることによって増えたということがある。ひとつの可能性として過剰診断があるのではないかと。数が増えているのは過剰診断ではないのか。(中略)過剰診断、過剰診療だとすると、必要もない治療で子どもに傷が残るかもしれない。

鈴木:すみません。あの臨床データを我々が公表していないのに、なぜ、取らなくてよいがんと断定できるんでしょうか。中には、それは申せませんけれど、決して取らなくてよいガンを我々が手術したというわけではありません。

渋谷:それなら、それはどういう臨床的な、本当にこれが取らなくって良いかどうか。。。

鈴木:先生、般的にリンパ節転移とか腫瘍の浸潤(しんじゅん)とかそういうものを含めて、今回一番小さい人は5ミリ台ですので、そこをみんな取られてますけど、多くの人は10ミリ以上で、しかもリンパ節転移がどのくらいあるかってことを含めて。。

渋谷:結構、リンパ節転移があるんですか?

鈴木:そういうことは、個人のデータはお話できませんけど、決して、ないわけではない。

渋谷:声がでないとか、リンパ節転移とか、どのくらいの割合なんですか?

鈴木:リンパ節転移の数は、ここでは公表しない。

渋谷:じゃあ、それでは分かんないんですよ。

(以下省略)

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