東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内に住んでいた若者が東京電力に損害賠償を求めた「311子ども甲状腺がん裁判」の第18回口頭弁論が2026年6月17日に開かれた。裁判長の交代に伴い、原告2人が意見陳述を行った。
声を詰まらせる原告2人〜自分だけの問題じゃない
今回、意見陳述を行ったのは、事故当時中学3年生だった原告3と、幼稚園年長だった原告6の二人。ともに、喉に針を刺す穿刺吸引の場面で声を詰まらせ、時折、すすり声を上げながらも、最後まで意見陳述を読み上げた。
最初に法廷に立った原告3のちひろさん(仮名)は、「このがんは、ただのがんではありません。国や県は、「福島原発事故とは関係ない」と言いますが、私たち患者や家族の多くは、心の中では被ばくの影響ではないかと考えています。」と甲状腺がんを取り巻く不安定な状況を吐露。「被ばくとの関係を語れば、差別や中傷の対象になるかもしれない。そんな不安もあり、私たちは複雑な思いを抱えながら、長い間声を上げることができませんでした。」と葛藤を述べた。
また、被告側意見書で、過剰診断論を主張した杉谷巌日本内分泌外科学会理事長を批判。患者の病気の実態を把握することなく、あのような意見書を書いたことを、私は非常に残念に思います。」と訴えた。
2度にわたる手術を受け、半永久的に薬を飲み続け、定期的な診察を受けながら生活している原告6のこはくさん(仮名)は裁判にかける思いについて、大学生になり「ただ参加しているのではなく、「原告としてここにいる」という意識が、少しずつ自分の中で明確になってきた」と説明。「この裁判は、過去の問題ではなく、今も続いている問題。」だと強調した上で、過酷な状況は、「私だけでなく、同じような状況に置かれている人たちにも共通している現実だ」と訴えた。
証人尋問は2027年4月から開始
双方の主張が終盤に差し掛かっている甲状腺がん裁判。原告側の代理人によると、新たに着任した須賀康太郎裁判長は口頭弁論に先駆けて行われた進行協議で、2028年春頃には判決を出したいとの見通しを示したという。
原告弁護団によると、次回9月に開かれる第19回口頭弁論では、原告被告の双方がこれまでの主張をまとめた書面を提出した上で、専門家の証人尋問についての考え方を示す。証人が決まるのは、12月2日の第20回口頭弁論期日となった。12月にスタートするはずだった証人尋問は来年4月からにずれ込み、半年の間に3〜4期日証人尋問を行なう見通しだ。来年中に結審し、判決は2028年の3月から6月頃。
原告側は証人として、チェルノブイリ原発事故後にベラルーシの入り、現地で子どもたちの甲状腺がん手術を行なった医師で、元松本市長の菅谷昭氏のほか、UNSCEAR2020/2021報告書の被ばく評価を批判している黒川眞一高エネルギー加速器研究開発機構名誉教授を証人申請したいとしている。また、被告側の意見書を書いた日本内分泌外科学会理事長の杉谷巌日本医科大学教授も申請する方針を明らかにした。
被告側は、原告側の正式な証人申請を見た上で、対応を決めるとことが決まったという。前回の期日では、被告側は証人尋問は必要がないとの考え方を示したいた。