移民難民
2023/05/31 - 20:49

声をあげる若者たち~入管法改正案を廃案に!

国会で審議中の「入管難民法」改正案の審議が、参議院で大詰めを迎えている。与党による強行採決の恐れがある中、国会前では30日、シットイン(座り込み)が行われるなど、反対運動のうねりは日に日に高まっている。その活動の中で、今、目立っているのが若者たちの姿だ。20代の学生や社会人から構成される難民支援団体「BOND(バンド)」のメンバーを取材した。

衆議院議員会館前:抗議活動を行う難民支援団体BOND(バンド)

学生が運営の中心を担う難民支援団体BOND

日本で生活する外国人労働者・難民を支援するボランティア団体「BOND 」。 入管の実態に危機感を抱いた学生が、2008年に設立した。それまで、バラバラに活動をしていたが、入管の実態に危機感を抱き、発信力を高めようと活動を開始したという。現在のメンバーは55人。平均年齢は20代前半で、学生が運営の中心を担っている。

難民支援団体BOND(バンド)事務所:学生メンバーの真栄田早希さん

中心メンバーのひとり、真栄田早希さんは 弁護士を目指す20歳の大学3年生だ。名古屋出入国在留管理局収容所内で発生したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん死亡事件がきっかけで入管問題に関心を抱き、 BOND の門をたたいた。弱い立場の人に寄り添う活動がしたいと考えている。

自分自身も生きづらさを抱えて生きてきたという真栄田さんは、より困難な立場に置かれている移民・難民の状況に衝撃を受け「知れば知るほど、きちんと向き合わないといけない」と強く感じるようになったという。

現在、退去強制令が出た外国人の99%が既に帰国している。「今回の改正案は、より入管に強い権限を持たせ、残りの1%の人たちの帰国を促すものだ」と真栄田さんは憤る。「母国に帰ると命の危険があったり、日本に家族がいたり、日本に生活基盤があるなど、帰国できない事情を抱えた人たち」「帰らないのではなく、帰れないんです」と指摘する。

若者にとって入管法は身近な問題

若者にとっては、「外国人」は身近な存在だ。同級生に留学生がいたり、海外にルーツのある友だちがいるのは当たり前。入管法は見ず知らずの誰かではない「友だちのこと」として捉えている。

4月6日の院内集会:在留資格を持たない子どもと通話でのやりとりを行った

4月6日ー。BOND が運営の中心となり、在留資格を持たない子どもたちをテーマにした集会が開かれた。この集会も、運営の中心を担うのは、若者たちだ。電話を通じて、子どもたちの切実な声が聞こえると、国会議員を含む参加者らが真剣に耳を傾けた。

日本に生活の基盤を置く外国人労働者の子どもたちのなかには、親の出身国の言語で話したり、読み書きができない子どもも少なくない。日本国籍の同級生と同じように育ったにもかかわらず、入管の許可なしには県をまたぐこともできない。国民健康保険に加入できなければ、大学への入学を断られることもある。就労が認められていないため、生活費を稼ぐこともできない。

「わたしたちのような在留ビザを持たない子どもに、ビザをください」

電話ごしに、子どもがそう訴えると、真栄田さんは「絶対に廃案にしないといけません。国会内と世論の声で、廃案にしましょう」と呼びかけた。

東京出入国在留管理局前

面会で明らかとなる入管の実態

東京・品川にある東京出入国在留管理局。真栄田さんは4月、収容されている外国人との面会にやってきた。入管での面会活動は、 BOND の軸となる重要な活動の一つだ。毎週、面会を行い、健康状態や入管での待遇を確認している。この日に面会した外国人は、股関節に痛み抱えていた。入管に薬の処方を求めたが、対応してくれなかったと、真栄田さんに訴えてきたという。

収容されている外国人は、外部とのコミュニケーションが遮断されている。このため、支援者による面会は、外部と繋がることのできる数少ない機会だ。真栄田さんは面会するたび、当事者が抱える悲しみや苦しみを追体験するという。「社会に対して、こんなに酷いことが当たり前のようにまかり通っていること訴えていきたい」。そう語気を強めた。

国会議事堂前:2000人を前にスピーチする真栄田さん

「最後まで諦めずに共に声をあげ続けましょう」

4月21日ー。改正案に反対する国会議事堂前の大規模な集会で、 BOND を代表して真栄田さんがスピーチを行うことになった。今年1月から毎週金曜日に行っている抗議活動でスピーチすることはあるが、2000人が集まるような大規模集会でのスピーチは初めてという。

名前や顔を出して発言することについて、「最初はこわかったです」と明かしたうえで、「でも、”外国人は帰れ”と言われるほうが悲しいし、傷つきます」「自分のようなひとりの学生が動いているということを、知ってもらいたい」と力を込める。

「当事者の事情を完全に無視して自らを正当化する神経が本当に信じられません!」
「国と入管は、憲法と国際法を守ってください!」

5分間にわたるスピーチで、真栄田さんは悲しみや怒りを隠さなかった。「わたしたちの声には、社会を変えていく力があります」「 最後まで諦めずに共に声をあげ続けましょう 」。最後にそう締めくくると、深々と頭を下げた。

※与党による強行採決の可能性が浮上したことをうけBONDは、6月1日 (木) 13時半から高田馬場駅前ロータリー広場にて強行採決阻止の緊急スタンディングを行う。

参考:BOND(バンド)~外国人労働者・難民と共に歩む会~
ホームページ:https://nanmim-bond.amebaownd.com/
各種リンク:https://linktr.ee/nanmin_bond

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