小児甲状腺がん
2022/01/17 - 11:00

甲状腺がん患者の「対照症例研究」に着手

福島県で実施されている甲状腺検査について評価する第18回甲状腺検査評価部会が1月18日、福島市内で開かれた。UNSCEAR 2020 推定甲状腺吸収線量と甲状腺がんの発見率と関連を分析した結果、被曝とがんの間に関連は見られなかったと報告した。

評価部会では、これまで「UNSCEAR2013」報告書の推定甲状腺吸収線量と甲状腺がんの発見率を比較し、甲状腺がんの被曝影響はないとの見解を示してきたが、昨年3月に「UNSCEAR 2020」報告書が公表されたことを受け、改めて、同報告書の推定甲状腺吸収線量と甲状腺がんの発見率とを比較。本格検査2回目と3回目を比較する「縦断調査」も行った。

この結果、先行検査(1巡目)では、線量が高くなるほど甲状腺がんの発見率が低くなる逆相関関係(量反応関係)が 認められたと報告した。一方、本格検査の検査2回目と 3 回目は、ともに、量反応関係は認められなかったとした。また、本格調査の2回目と3回目の比較でも、有意な関連は認められず、量反応関係も認められなかったとした。

対照症例研究も着手

また、がんとなった患者とがんになってない患者(対照群=コントロール群)を比較する「症例対照研究」の試算結果も公表した。基本調査を提出し、外部被曝線量がわかっている患者と比較可能な同様の条件の対称群を比較。その結果、線量によって疾病の有無に差がなかったと報告した。

今回の報告は中間的な試算だとした上で、座長の鈴木元国際医療福祉大学クリニック院長が、疫学の専門家らに解析上の課題を求めたところ、国立がん研究センターの片野田耕太がん対策情報センターがん統計・総合解析研究部部長らが、検査間隔など、対照群の条件にずれが生じるオーバマッチングが起きない研究設計が必要だと指摘。詳細な条件を改めて考慮するよう求めた。

集計外は1割

がん登録のみ患者は27人また、昨年6月の大17回甲状腺検査部会で、割合しか示されなかった全国がん統計をもとにした甲状腺がん患者人数が公表された。それによると、2012年1月~17年12月の間に、県民健康調査と全国がん登録によって把握された甲状腺がんは27人で、OurPlanet-TVが割合をもとに既報していた人数と合致した。

全国がん登録に登録されている「がん」は「悪性疑い」は含まれない。2018年1月以降、県民健康調査で甲状腺がんと診断された67人を含めると、2021年6月までに甲状腺がんと診断された子どもは293人となった。

第18回甲状腺検査評価部会資料より

データで注目すべきは、検査年度による集計外の割合の違いだ。2012年から15年では、県民健康調査で見つかったがんに比べ、集計外となっていたがんは、わずか8・3%だったが、2016年から17年では、半数が集計外となっている。2018年以降は全国がん登録をもとにした集計外の人数が公表されていないが、最低でも30人程度の集計外がある可能性がある。

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