「原子力災害対策指針」見直し言及〜能登地震受け、規制委員長
原子力規制庁は10日、能登半島地震の発生時、北陸電力志賀原発で観測した地震の揺れの加速度が一部、設計上の想定を上回ったと明らかにした。また原子力規制委員会の山中伸介委員長は記者会見で、原発で重大な事故が起きた際の国の指針について、見直しが必要との意向を示した。
地震の揺れが一部で想定超え
原子力規制庁は10日、能登半島地震の発生時、北陸電力志賀原発で観測した地震の揺れの加速度が一部、設計上の想定を上回ったと明らかにした。10日の原子力規制委員会の会合で、規制庁の担当者が説明した。
規制庁によると、想定を上回ったのは1、2号機の基礎部分で観測された、東西方向の0.47秒周期の揺れ。大きさを示す加速度(ガル)は、1号機の想定が918ガルだったのに対し、957ガル、2号機は871ガルは846ガルの想定に対して846ガルだった。
地震の揺れは、周期の長さによって影響を受ける建物や設備が異なる。このため、原発審査では周期ごとに最大の加速度を想定している。今回、想定を超えた周期は、原子炉建屋などの重要施設が影響を受けにくい周期で、原発の健全性は保たれていると説明した。
規制庁の資料(資料1 令和6年能登半島地震における原子力施設等への影響及び対応【PDF: 6.9MB】)
モニタリングポストは今も5カ所でデータ取得できず
また、今回の地震では、1号機と2号機の変圧器で油漏れが生じた他、モニタリングポスト18ヶ所でデータが観測できなくなった。規制庁によると、志賀原発周辺のモニタリングポスト116地点のうち、データが一時、取得できなかったのは最大18ヶ所で、10日午後の時点でも6地点が測定できず、5地点に代わりの可搬型ポストを設置した。
山中伸介原子力規制委員長は記者会見で、「従来の多重化の対策では信頼性の向上という意味で努力が足りなかったと反省している」と述べ、モニタリングポストについて、対策の強化を検討する考えを示した。
原子力災害指針の「屋内退避」困難
記者会見では、原子力規制委員会が定めている「原子力災害対策指針」についても記者が質問。「原子力災害対策指針」でが、原発周辺の半径5キロから30キロ圏内の住民が、「屋内退避」をすることになっているが、今回の地震では、広い範囲で家屋が倒壊している現状を問われ、山中委員長は、「屋内退避ができないような状況が発生したのは事実。知見をきちんと整理したうえで、災害対策指針を見直す必要があれば、見直していきたい」と述べた。
また、志賀原発の再稼働の前提となる審査については、今回の地震に関する新知見を反映させる必要とした上で、「新知見がまとまるまでは年単位の相当な時間がかかる」との見方を示し、審査が長期化するとの見通しを示した。