移民難民
2025/10/02 - 10:43

ウィシュマさんの死亡前の映像〜遺族が全面開示求めた裁判始まる

名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の施設で2021年3月にスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが体調を崩して死亡した問題で、遺族が国に対して死亡前295時間の監視カメラの映像をすべて開示するよう求めた訴訟の第1回口頭弁論が30日、東京地裁で開かれた。遺族側は「映像は遺族の権利」として全面開示を訴えたが、国側は争う姿勢を示している。

法廷では、ウィシュマさんの妹で原告のポールニマさんが通訳を介して意見陳述を行い、「入管が頑なにビデオを見せないのは、残りに不都合な真実があるから」と全面開示を強く要求。「姉の最後を記録した映像は遺族の権利。公正で迅速な裁判を」と訴えた。

また原告代理人の指宿昭一弁護士は、不開示の理由とされたウィシュマさん以外の被収容者の映り込みについて、既に公開されている5時間の映像と同じようにマスキング処理すればよく、「技術的にできないというのはありえない」と述べ、改めて不開示決定の取り消しを求めた。

また国が不開示の理由の一つとして、監視カメラの位置や出入り口が明らかになるなど「保安上の支障を生じる」と主張している点について、指宿弁護士は記者会見で、既に開示されている5時間も同じだと指摘。「何でもいいから理由を付けて開示したくないということだと思う」「マスキングすればいいこと」と反論した。さらに、国側が「名古屋入管には、映像編集ソフトが導入されたパソコンが1台しかなく、1人の職員が行うのに5年を超える」などと述べていることについて、「でたらめだと思う。とんでもない主張」と厳しく批判した。

死亡したウィシュマ・サンダマリさんをめぐっては、遺族は2022年、施設が適切な医療を提供しなかったとして国に損害賠償を求める訴訟を起こしている。ウィシュマさんが亡くなる2週間前からの映像の計295時間のうち、国が裁判所に提出したのは5時間分にとどまる。遺族は今年2月に全面開示を求めたが不開示とされ、これを不服として5月、映像の全面開示を求める新たな裁判を起こしたもの。

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