2025/10/24 - 12:08

長崎と広島の格差、浮き彫り〜『被ばく「封じ込め」の正体』出版記念シンポ

核が開発されてから今年で80年になるが、日本政府は今も、放射性降下物による内部被ばくや低線量被ばく軽視している。広島、長崎、そして米国の水爆実験により太平洋場で被ばくした船員、そして福島。それぞれの場所で内部被ばくした被害者の声を可視化し、共通する課題を浮き彫りにしようと、10月18日、専修大学でシンポジウムが開かれた。

登壇したのは、広島や長崎、そして高知などから駆けつけたジャーナリスト5人。まず、長崎放送で2023年に放送された「夏空の灰〜被爆体験者とは何者か?」が上映され、長崎では「被爆地域」が狭く限定され、今も多くの人が、「被爆者」として認められない現実について報告があった。

国やメディアのいう「被爆者」とは、被爆者援護法によって「被爆者」と認められ、「被爆者健康手帳」の交付を受けている人を指す。国はこれまで、原爆から放出された放射線(初期放射線)による外部被ばくに基づいて、援護区域を設定してきた。原爆投下後に降下した放射性物質を体内に取り込んだ、いわゆる内部被ばくの影響は、ほとんど無視してきたと言っていい。長崎県内では、被爆地の拡大を求める運動が起きたが、国の姿勢は変わらず、その代わり、被爆体験による精神疾患が認められる場合に限って、「被爆体験者精神医療受給者証」の交付するようになっている。

広島の「黒い雨」と長崎の「被爆体験者」の格差

長崎放送の報道メディア局次長の古川恵子さんは、広島では「黒い雨」訴訟で原告が全面勝訴し、被爆者の対象が拡大されたが、その後、長崎は対象から外されたと報告。さらに昨年9月の長崎地裁の判決でも、原告の一部しか「被爆者」として認められなかったとして、「長崎はなぜ、扱いが異なるのか」と悔しさを滲ませた。

このシンポジウムは、5人が執筆したブックレット『被ばく「封じ込め」の正体」』の出版を記念したもの。同書では、広島の「黒い雨」訴訟や長崎の「被爆体験者訴訟」、「ビキニ船員訴訟」、福島の「甲状腺がん裁判」の4つの裁判の報告に加え、「100ミリシーベルト以下は健康被害はない」という「100ミリシーベルト論」や「内部被ばく」の切り捨てについて論じている。

『被ばく「封じ込め」の正体」〜広島、長崎、ビキニ、福島の声から』岩波ブックレット
https://www.iwanami.co.jp/book/b10146264.html

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