名古屋の入管施設でスリランカ人の女性が収容中に死亡した問題で、収容中の様子が記録されたすべての映像が開示されないのは違法だとして、女性の遺族は20日、映像の全面開示を求める裁判を東京地方裁判所に起こした。
名古屋出入国在留管理局の施設で収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが体調不良を訴えて亡くなったことをめぐり、遺族は2022年、ウィシュマさんの死亡原因は、施設内で適切な医療が提供されなかったためだとして、国に損害賠償を求める裁判を起こしており、今回の訴訟は、それに関連する証拠映像の全面開示を求めるもの。
収容中の様子を記録したビデオは計295時間にのぼるが、現在、国側が証拠として裁判所に提出しているのはわずか5時間にとどまり、残りの290時間は提出されていない。そこで、遺族側は今年2月、映像の全面開示を求め、名古屋入管に開示請求を行ったが、入管側は「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす」などとして、全映像の不開示を決定した。これを不服として、遺族側は20日、国に全面開示を求めた裁判を起こした。
提訴後の記者会見で、代理人の駒井知会弁護士は「死してなお、入管はウィシュマさんの個人情報を支配している」と批判。映像を「遺族にわたすべき」とした上で、「この国の行政機関による誤った情報統制、情報秘匿を正すための訴訟。」と強調した。また、遺族で原告のポールニマさんは「映像は姉のものであり、政府のものではない」と、全ての映像を開示するよう訴えた。