福島県で実施されている甲状腺検査をめぐり、関西在住の科学者で作る「福島原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする会(明らかにする会)」は30日、福島県に対し、「県民健康調査」検討委員会甲状腺検査評価部会が2023年にまとめた「部会まとめ」の撤回を申し入れた。

「部会まとめ」撤回の申し入れ (c)Mari Suzuki
要請書は、部会まとめの解析で使っている被ばく線量は、2011年3月15日から16日にかけて、福島市や郡山市などの中通りを襲った放射線プルームを考慮しない計算に基づいていると指摘。この解析をもとに、放射線被曝と甲状腺がんとの間には相関がないと結論づけた「部会まとめ」を撤回するよう求めた。
明らかにする会代表の藤岡毅大阪経済法科大学客員教授は、部会まとめの根拠となっている甲状腺等価線量は、鈴木元部会長が2022年に執筆した論文に基づいているとした上で、鈴木論文には中通りの被ばく線量が示されていないと批判。評価部会として、甲状腺等価線量を公表するよう求めた。
また明らかにする会の要請書に賛同した「UNSCEAR2020/21報告書検証ネットワーク」の佐藤嘉幸筑波大学准教授は、解析の元データが情報公開で開示されなかったことを問題視。解析結果がどのようなデータに基づいているのか明らかにしなければ、科学的な検証はできないと批判した。
県民健康調査課の植田浩一課長は、県として受け止め今後の参考にしたいと述べた上で、要請内容は検討委員会や部会委員に共有するとしている。

申し入れに同席した甲状腺がん支援グループあじさいの会の共同代表の千葉親子さんは記者会見で、福島県は甲状腺がんとなった当事者の声を聞いていないと批判。県は、なぜ自分が甲状腺がんとなったのか知りたいという患者の声に正面から向き合ってほしいと訴えた。