リニア(大深度)
2025/08/07 - 18:04

町の水が枯れた~リニア沿線で何が起きているのか

岐阜県瑞浪市大湫町。この町で昨年2月、地下水位が低下し、井戸の水が枯れる現象が相次いだ。原因は、リニア中央新幹線の工事だ。建設現場から大量の地下水が流出し、地盤沈下も発覚した。リニア中央新幹線の工事現場で今、何が起きているのか。

人口約300人、江戸時代は宿場町として栄えてきた大湫町。この町で昨年2月、共同水源で水枯れが発覚した。JR東海はリニア中央新幹線のトンネル工事が原因と認め、住民は工事の中断を求めた。しかし、JR東海は、工事を続行。被害はたちまち拡大し、水源14箇所で水枯れが起きたり、地下水位が低下する事態となった。町のあちこちで、共同水源や井戸の水が枯れ、使えなくなる事態が起こり、JR東海は町中をまわり、応急処置に追われた。

しかし、被害は井戸の水枯れだけに止まらず、地盤沈下が起きていることも判明。JR東海は大量の湧き水を減らすため、岩盤の亀裂にセメントなどを流す「薬液注入」を行った。モデルにしたのは、鹿児島県の北薩トンネルだ。ここでも、工事中に湧き水が出たが、「薬液注入」を行い、成果を上げていた。しかし、大湫町では「薬液注入」を進めても、被害は収まるどころか、悪化の一途を辿った。地盤沈下の影響で、町の至る所に亀裂が走り、ドアが閉まらないなどの被害が広がる。中には10センチ以上も地盤沈下し、床が傾いた建物も。

リニア工事の影響は、町の農業にも及んでいる。集落から1キロほど上流にある農業用水の水源にもなかなか水がたまらず、田んぼの中にも高低差ができた。そして、今年6月、JR東海は、切り札だった「薬液注入」を断念することを発表した。モデルだった鹿児島県の北薩トンネルで崩落事故が起き、リニア工事でも同じリスクが強まったためだ。JR東海によると、さらに20センチあまり、地盤沈下が進む可能性があるという。

JR東海は、住民説明会を開催し、深井戸を掘ったり、沢水を引くことで、水不足を解消する代替案を提案するが、住民は納得していない。地下水の流出を止めない限り、日常生活や農業への影響は続くためだ。7月、田んぼでは、稲が水に浸かりすぎて根が張れず、稲が育たない現象が起きた。しかし、JR東海に打つ手はない。地盤沈下は続く。

地盤沈下によって田んぼに高低差が生じたため、稲にも影響が・・・

取材・撮影:井澤宏明

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