福島第一原発事故
2021/11/03 - 11:06

東電強制起訴の控訴審始まるー「現場検証を」検察官役

福島第一原発事故をめぐり、津波対策を怠ったとして業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人の控訴審が2日、東京高裁で始まった。検察官役の指定弁護士は「一審判決には重大な誤りがある」と主張。弁護側は改めて無罪を主張した。一審で却下された「現場検証」を東京高裁が行うかが注目される。

同裁判は、東電の勝俣恒久・元会長(81)、武黒一郎・元副社長(75)、武藤栄・元副社長(71)の3被告が、津波を予測できたのにも関わらず、何の対策も講じずに原発事故を招き、避難を余儀なくされた双葉病院の患者ら44人を死亡させたなどの罪に問われているもの。検察が2度不起訴にしたが、検察審査会の議決で強制起訴されていた。

2019年9月の東京地裁での一審判決は、国の「地震調査研究推進本部」が2002年に公表した「長期評価」の信頼性を否定し、「予見可能性はなかった」と判断。禁錮5年の求刑に対して、無罪を言い渡していた。

指定弁護士は3人の証人尋問要求

控訴審の初公判で指定弁護士は、長期評価について改めて「科学的信頼性は十分認められる」と改めて強調し、対策を講じることはできたと指摘。長期評価策定に関与した気象庁元地震火山部長の濱田信生氏、地震学者の島崎邦彦東大名誉教授の証人尋問を求めた。

さらに、対策を講じていれば全電源停止は免れたこととして、東芝原子力事業部門で原子炉施設の基本設計を担当してきた元社員渡辺敦雄氏の証人尋問も要求。同時に、一審では却下された現場検証の必要性を改めて訴えた。これらが採用されるかは、次回2月9日の公判で決まる。

注目される「現場検証」の採用

初公判に先立ち、地裁前では市民ら500人が集まり、緑のリボンを手にヒューマンチェーンを実施。「現場検証を」「丁寧な判断を」と声をあげた。また公判後、被害者側代理人の河合弘之弁護士は自身が10月29日に、別の裁判で、東京電力敷地内で現場検証を行った経験をもとに、「この事故は歴史上、最悪の事故。裁判官は現場を見てから判決を書くべきだ」と現場検証の必要性を訴えた。

時期これまでの経過
2011年3月11日東日本大震災
2012年6月11日福島原発告訴団(武藤類子団長)が東電関係者ら42人を告訴告発
2013年9月9日東京地検が勝俣元会長ら42人全員を不起訴処分
2014年7月31日検察審査会が勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長を起訴相当と議決
2015年1月23日東京地検が元経営陣3人を再び不起訴処分
2015年7月31日検察審査会が再び起訴相当と議決
2016年2月29日検察官役の指定弁護士が勝俣元会長ら旧経営陣3人を強制起訴
2017年6月30日東京地裁で初公判(永渕健一裁判長)
2019年9月19日東京地裁が旧経営陣3人全員に無罪判決
2021年11月2日東京高裁で控訴審初公判(細田啓介裁判長)



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