2022/02/03 - 19:27

ウィシュマさん事件から1年~「命の危険感じる」長期収容の実態 

去年3月、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が名古屋入国管理局の施設で死亡した事件。ウィシュマさんの事件を受けて出入国在留管理庁は1月25日、職員の意識改革のための「使命と心得」を策定した。しかし現在、東京入管に長期収容中のスリランカ人男性に対して、入管職員による悪質な対応が繰り返されていて、男性が支援者にあてたメモには“命の危険”を感じているとの内容が綴られていた。ウィシュマさんの事件が繰り返されないように入管の体制は変わるのか。外国人収容者の支援にあたるSYI収容者友人有志一同、柏崎正憲さんに話を聞いた。

入管庁、職員向け「使命と心得」策定

出入国在留管理庁が14日付で策定した『使命と心得』は、名古屋入管の死亡事件を受けて去年8月、職員の危機意識や医療体制などに問題があったとする調査報告書に盛り込んだ改善策が柱となっている。職員全員が「秩序ある共生社会の実現に寄与する」ことを使命に掲げ、「誠心誠意、職務の遂行に当たらなければならない」とした。心得では「人権と尊厳を尊重し礼節を保つ」「風通しの良い組織風土を作る」など8点を挙げている。以下、全文。

出入国在留管理庁職員の使命と心得

「出入国在留管理庁職員の使命と心得」は,出入国在留管理行政に携わる全ての職員が,国民から負託された使命を見失うことなく,自信と誇りを持って職務に当たるとともに,出入国在留管理行政が適正に行われ,国民の信頼と期待に応えることができるよう,出入国在留管理庁職員が果たすべき使命と心得を示すものである。

【出入国在留管理庁職員の使命】
現代国際社会において,主権国家の権能である出入国在留管理は,その重要性をますます高めている。その中において,我が国の出入国在留管理行政の基本的な役割は,全ての人々の人権を尊重しつつ,我が国に入国し,又は出国する全ての人の出入国及び我が国に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図ること,難民の地位に関する条約の締約国として,難民を保護すること,そして外国人の受入れ環境整備に係る総合調整を行うことである。我が国において,これらの役割を担う出入国在留管理行政は,ルールを守る外国人を積極的に受け入れる一方で,我が国の安全・安心を脅かす外国人の入国・在留を阻止し,確実に我が国から退去させることにより,円滑であって厳格な,しかも,適正な出入国在留管理を実現することを目指す。また,諸外国や国際機関と協調し,真に庇護を必要とする者を迅速かつ確実に保護することを目指す。さらに,関係機関と連携し,日本国民と我が国社会に受け入れた外国人の全てが良き隣人として共に暮らせる共生社会を実現することを目指す。これらを実現することにより,我が国の秩序ある社会の実現と経済・社会の健全な発展に寄与することこそ,国際社会で名誉ある地位を希求する我が国の出入国在留管理行政の使命であり,我々出入国在留管理庁職員の使命である。

【出入国在留管理庁職員の心得】
出入国在留管理行政に携わる全ての職員は,国家公務員として,国民全体の奉仕者であることを常に念頭に置き,秩序ある共生社会の実現に寄与する使命を担っていることを自覚するとともに,そのような重大な使命を負託した国民の信頼に応えなければならない。そのためには,以下の点に特に留意しつつ,高い職業倫理を保ち,絶え間ない自己研鑽に努め,自身の判断が真に社会全体の利益にかなうものとなっているか,常に自問しながら,自信と誇りを持って公正な判断を行い,誠心誠意,職務の遂行に当たらなければならない。

1 出入国在留管理行政の専門家としての矜持を持つ
出入国在留管理行政の専門家としての自覚を持ち,法令等を精読し,業務上の知識を養うとともに,求められる
規範を遵守する。

2 広い視野を持ち職務遂行能力を高める
常日頃から国際情勢を含めた社会の動向の把握に努め,研修や多様な社会経験を通じて教養と良識を深め,広視野と柔軟な思考能力を涵養し,職務の遂行に活かす。

3 公正な目と改善の意識を持つ
業務が公正に行われているかを常に意識し,改善すべき点は躊躇なく意見を述べ,又は自ら見直す。

4 人権と尊厳を尊重し礼節を保つ
人権と尊厳を尊重し,人と接するあらゆる場面において,相手の立場,文化や習慣に十分に配慮しつつ,礼節を保ち,丁寧に接する。

5 心情を理解しつつ冷静さを持つ
相手の心情を理解しつつも,感情に流されることなく,常に冷静さを失わずに毅然と対応する。

6 聴く力と話す力を養う
内外の様々な意見に耳を傾け,前例にとらわれず,広く国民の良識にかなう判断をするよう努め,当事者を含めた社会全体の理解を得られるよう必要な説明を尽くし,積極的な情報発信を行う。

7 多様な関係者・関係機関と良好な関係を築く
適正な出入国在留管理行政は,関係者・関係機関の理解と協力なくして実現しないことを認識し,国内外,官民を問わず,関係者・関係機関との良好な関係の構築に努める。

8 風通しの良い組織風土を作る
職員同士が互いに敬意を払い,自由に意見を述べ,自ら判断し難い事柄については速やかに同僚や上司に相談・報告できる風通しの良い組織風土作りを心掛けるとともに,セクショナリズムに陥ることなく,組織が一体となって課題に対応する。

いのちの危険感じる~変わらない入管の対応

現在、品川にある東京入管には、ウィシュマさんと同じスリランカ出身の男性・ジャヤンタさんが長期収容されている。収容中に何度も職員から暴力を受け、現在は食事を受け付けない状態。点滴とわずかな流動食だけで生き延びている状態が続いている。支援者にあてた食事の内容を記録メモには、成人男性が1日に必要とする摂取カロリー(50代男性2600kcal)の3分の1にも満たない内容となっていた。そのメモには“命の危険を感じる”と綴られていた。

仮放免にむけて「人身保護請求」法的手続きへ

ジャヤンタさんの仮放免に向けて支援を続けているSYI・収容者友人有志一同の柏崎正憲さんは、「人身保護請求」という法的手段に出た。これまでのような入管への抗議アクションや署名活動だけでは、“何も変わらない”“出来得る手段は全部試すしかない”と語った。また柏崎さんは、入管庁が策定した『使命と心得』の内容についても「入管トップは何も理解していない。ウィシュマさんの事件も“自分たちは何も悪くない”と、現場の職員に責任を押し付けているのが目に見える内容だ」と批判した。

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