ビルマ(ミャンマー)
2022/03/18 - 14:13

ウクライナ侵攻の影で~ミャンマー“人権侵害”に流れる日本の公的資金

ロシア軍によるウクライナ侵攻では、連日、激しい戦闘が続き、数千人に及ぶ犠牲者が出ている。「民間人への攻撃はしない」としていたロシアだが、16日にウクライナ当局が発表した内容では、こども103人が殺され、113人が負傷している。国連によると、国外に逃れた難民は300万人を超えている。このウクライナ危機の影で、置き去りにされている人権侵害がある。

「鎮圧するために村ごと焼き払っている」―民主化活動家ティンウィンさん

ミャンマーでは、2021年2月1日の軍事クーデター以降、こどもを含む1677人が犠牲となり、44万人の国内外避難民が出ている。ミャンマー第2の都市、マンダレーで暮らすティンウィンさんは、弾圧の状況を目の当たりにしてきた。平和的な抵抗運動を続ける若者たちに対しても、国軍は容赦なく武力で鎮圧し、まだ幼い子供たちに銃を向けて射殺するケースも後を絶たないという。

また、抵抗する市民を押さえつけるために、村ごと焼き払うという残虐なケースが、いまなお続いている。軍事クーデターから1年がたち、国際社会の関心がだんだんと薄れるなか、ミャンマーの若者たちは民主化を取り戻すために、国軍の監視の目を避けながら、いまも町で声をあげ続けている。ティンウィンさんは「不完全ではあっても、この10年、民主化した社会を経験してきた世代にとって、かつての軍政時代に戻るという選択肢はない」という。

「日本は歴史的に国軍を強くしてきた」―メコン・ウォッチ 木口由香さん

戦車による攻撃やヘリコプターを使っての空爆など、ミャンマー国軍が力を持った背景には、実は日本からの開発援助が深く関係している。途上国での開発問題に取り組んできたNGO「メコン・ウォッチ」の木口由香さんは、政府開発援助・ODAや日本企業の投資が、国軍の武器購入などの資金源として使われてきたと指摘する。

軍事政権時代、欧米各国が厳しい制裁を科すなか、日本はミャンマーとの対話や経済協力を続け、国軍との深いつながりを持ち続けてきた。1988年に軍事クーデターが起きた際にも、日本は翌89年にいち早く軍事政権を“ミャンマーの正当な政府“として承認。国軍と”太いパイプ“を維持し、2011年にミャンマーが民主化プロセスを歩み始めた際には、大統領直々にミャンマーの「ティラワ経済特区」の投資を持ちかけられ、わずか1年で180億ドル規模の援助・投資を決めた。

木口さんの所属するNGO団体はこの1年、日本政府やJICA(独立行政法人国際協力機構)をはじめ、国軍系企業との事業に参画・投資をおこなっている疑いのある組織や企業に対して、「日本からの援助・投資をいったん中止し、国軍の資金源と断ち切るべき」と呼びかけをしてきたが、いまだ改善は見られない。

税金が国軍の武器購入などの資金源になっているのか?

公的資金、つまり日本国民の税金が、国軍の武器購入などの資金源になっているのかー。ODAの継続について「諸派の情勢を見ながら検討を続ける」とあいまいな対応を続けている外務省に対し、OurPlanet-TVは文書での回答を求めた。

現在、実施中のODA案件は34件で総額7,396億円としている。その案件の中で国軍系企業が参画している案件があると認めたうえで「事業は国軍系企業の利益向上のために実施しているものではない」と主張する。こうした開発援助による日本からの資金が、武器購入に使われているのかどうか確証は得られなかった。また、日本政府の今後の対応についても「諸要素の働きかけ状況を見ながら総合的に検討していく」と、この1年、何度も繰り返されてきた“同じ”回答だった。なお、今回の回答は外務省が関係する案件であり、経産省による国軍系企業への投資、防衛省による国軍士官候補生の受け入れなどは含まれていない。

ミャンマーで、いまなお続いている「人権侵害」に、私たち日本人が知らず知らずのうちに加担してしまっている可能性があるという背景から、OurPlanet-TVでは、この1年、「国軍の資金源を断て」運動の取材を続けてきた。日本国内でも、毎週末、日本で暮らすミャンマーの人たちが街頭に立ち、「ODAを中止して」「ミャンマー国民の声に耳を傾けて」「ミャンマーに関心を持って」と声をあげている。まずは立ち止まって、その声に耳を傾けることだけでも、できるのではないか。

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