非正規滞在者に対する入管施設への恣意的な長期収容は国際人権法に違反するとして、難民申請中の外国人男性2人が国を訴えていた裁判で、東京地裁は17日、収容の一部が国際人権法に違反していたとして、国に計120万円の損害賠償を命じた。
裁判を起こしたのは、イラン出身のサファリさんと、トルコ出身でクルド人のデニズさん。2人は2016年から2020年にかけて複数回、入管の施設に収容されていた。2人は裁判で、収容が長期にわたり、その間に精神的なストレスからうつ病を発症するなど、心身に大きな苦痛を受けたと主張。合理性や必要性のない長期収容は、国際人権法で禁止されている「恣意的拘禁」にあたると訴えていた。
判決で裁判所は、国際人権法の「自由権規約」に基づき判断し、入管収容そのものは合理性などがあれば許されるとの見解を示した。その上で、原告らが医師からうつ病と診断され、収容を避けるよう意見があったにもかかわらず収容を継続した一部の期間は、収容の必要性を超えた自由の制限であり「比例性の要件を欠く」として、自由権規約違反にあたると判断。国に対し、2人にそれぞれ60万円の支払いを命じた。
原告代理人の鈴木雅子弁護士は、裁判所が自由権規約に基づいて判断をしたこと自体に意義があると述べた上で、「国際人権法に違反するとした判決はこれまでにないのではないか」と高く評価した。原告のサファリさんは記者会見で「とても嬉しい」と喜びを語る一方、入管収容そのものが違法とまでは認められなかったことについては「まだ他の被収容者がいる。残念」と心境を述べた。原告側は控訴を検討している。