福島県の「県民健康調査」検討委員会の第58回会合が3月25日、福島市内で開催された。原発事故から15年が経過し、多くの調査が終わる中、現在も継続している甲状腺検査をめぐり、激しく意見が交わされた。
手術を受けた患者〜分かっているだけで350人
今回、公表されたのは、甲状腺検査6巡目と、25歳と30歳の節目検査の結果。6巡目では、穿刺吸引細胞診で新たに悪性ないし悪性疑いと診断された患者が2例、25歳と30歳の節目検診でそれぞれ1例増加した。この結果、がんの悪性と診断されたのは、365人となった。2019年12月までにがん登録で把握された集計外の患者47人と併せると、悪性ないし悪性疑いは、良性と診断された一人を除き412人となった。
また手術を受けて、がんと確定診断を受けた患者は、6巡目が1人増えて14人、25歳の節目検診が1人増えて20人、30歳の節目検診が1人増えて5人となった。この14年間で手術を受けて、がんの確定診断を受けた患者は、公表されているだけで352人と、350人を超えた。

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https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-58.html
甲状腺検査の利益とは?〜激論
甲状腺検査の継続をめぐっては、産婦人科医の室月淳委員が今回も、持論を展開した。室月委員は「これだけたくさんの数が見つかって手術されているということは、不利益の面がある」と指摘。甲状腺検査のメリットが見えないとして、死亡率の低下や進行がんの減少、手術侵襲の軽減など、甲状腺スクリーニングを継続することの利益を具体的なアウトカムで示すよう求めた。
これに対し、福島県立大学の志村浩巳甲状腺検査部門長は、検査によって早期診断が可能となり、合併症が減っており、外科が出した論文でも公表していると説明した。また死亡については、結論を出すには時期尚早との見方を示した。
甲状腺外科医の原尚人つくばセントラル病院副院長も、志村氏の意見に賛同。生命予後には影響しなくても、進行してから発見された甲状腺がんは、反回神経麻痺などのQOLに影響すると指摘した。また(25歳や30歳の節目検診で見つかった)成人の場合は、1センチ以下の微小がんはすぐに手術ではなく、経過観察が可能になっているとして、過剰治療の心配はないとの見解を示した。
「検査の意義」めぐる応酬〜記者会見でも
「甲状腺検査の意義」をめぐっては、記者会見でも応酬が続いた。北海道新聞の関口裕士記者が、「被ばくとのか関連があるとは認められなかった」と結論づけた検討委員会や甲状腺検査評価部会の過去の取りまとめを紹介。放射線の影響はないとしながら、検査を続けている理由について質問した。
これに対し、重富秀一座長は、「放射線の影響はないとは断定しておりません」と回答。断言するのは非常に難しいということで、表現はかなり慎重な言い回しを使用していると釈明した。また、福島県県民健康調査課の植田浩一課長は、県民に寄り添い、県民の意向に添う必要があるとの考えをしました。
関口記者はこれに対し、デメリットがありながら検査を継続する理由がわからないと反発。さらに「いま、311甲状腺がん裁判と別の動きで、不要な検査を受けて、不要な手術をしてしまったんじゃないかということで、裁判を準備している人がいると聞いている」とした上で、そうした訴訟への予防線として「任意の検査」であることを強調しているのではないか?と追及した。
これに対し、志村氏は、この検査はスタート時から任意の検査ですので、任意はずっと一貫していると回答。やみくもに診断しているわけではなく、デメリットの過剰診断の可能性があるということで、それを減らす取り組みを行いながら検査をしていると説明した。