日本で事業を行う外国人経営者の在留資格「経営・管理」の要件が厳しくなり、必要とされる資本金が500万円から3000万円に引き上げられてから半年。外国人の経営する店舗をが閉店に追い込まれるなど、深刻な影響が出ている。こうした状況を受け、市民らが13日、参議院議員会館で要件の見直しを訴える集会を開いた。
集会を呼びかけたのは、外国人の問題に関心のある市民らでつくる「店も街もつぶす経営・管理ビザ改悪ストップアクション」。埼玉県内で飲食店を営んできた当事者をはじめ、約120人が参加。法務省出入国在留管理局の職員に要望書と署名を提出した。
インドカレー店の経営者「突然帰れと言われ、どうすれば」
当事者として、スピーチをしたのは、18年前から埼玉県鶴ヶ島市でインドカレー店を営んできたインド国籍のクマールさん。「日本で30年間、言葉の壁や生活環境の違いに苦労しながらも、飲食店のシェフ仲間や商工会、市役所、そしてお客さんに支えられて頑張ってきた」「どうすればいいのかわからない。助けてほしい」と声を詰まらせた。
クマールさんは30年前に技能ビザで来日。日本で結婚し、18年前から埼玉県鶴ヶ島市でインドカレー店を営んできた。インドカレー店を始めるにあたり、クマールさんは在留資格を、「技能」ビザから「経営・管理」に変更。日本に定住するため自宅も購入した。2人の子どもにも恵まれ、地域の中で、充実した生活を送っていた。
ところが、昨年10月の省令改正により状況は一変。昨年12月に出入国在留管理局に、「経営・管理」ビザの更新を申請したところ、今年2月に不許可を言い渡されたという。その際、入管から、在留資格を「経営・管理」ビザから料理人の「技能」ビザに変更することを提案された。そこで、クマールさんは、日本人の知人に店の経営を譲る形で在留資格の変更を試みたが、入管は今年4月、態度を一変。「日本人経営者の不在時にクマールさんが実質的に経営する疑いがある」として、再び不許可とした。
在留資格を失う5月22日までに、家族全員でインドへ帰国するよう迫られているクマールさん。「娘は高校三年生になり、進路を決める大事な時期」「日本で生まれ育った子どもたちは日本語しか話せない。子どもたちにとってインドは外国だ。人道的にどうなのか」と訴えた。
「入管の対応は官製ヘイト」と行政書士
外国人の在留資格手続きをサポートしてきた行政書士の山田恭永さんはクマールさんの話を受け、「本来であれば、クマールさんのケースは「技能」ビザへの変更が認められるべき事案だ」と指摘。入国管理局のある場所や担当者によって対応が変わる実態があるとして、「入管は、どうすれば不許可にできるかという視点で、重箱の隅をつつくような審査をしている」「入管の対応は官製ヘイトだ」と厳しく批判した。
主催者の一人・東京大学4年の金澤伶さんによると、要件が厳格化されて以降、外国人が経営する企業の20社に1社が廃業を検討しているという。また「経営・管理」ビザの新規申請が96%減少しているとして、「このままでは、日本で起業する外国人が減ることは明らかだ」と批判した。法務省が改正の理由にあげるペーパーカンパニー対策については、「ペーパーカンパニー対策であれば、日本人か外国人かに関係なく調査し、対策を講じるべき」と訴えた。
入管庁は昨年10月、事業実態のないペーパーカンパニーを設立し、不正に在留資格を得る外国人への対策を名目に、資本金要件を6倍に引き上げる省令改正を実施。経営者以外の常勤職員を1人以上配置したり、日本語能力も求めるなど、資格要件を厳しくした。すでに「経営管理」ビザを取得して、国内に事業を行っている経営者も対象となり、2年後の2028年10月までに、これらの要件を満たせない場合は事業をたたんで、帰国しなければならない。
3ヶ月で署名53000筆
集会には入管の職員2人が出席。資本金ではなく、営業実態に基づいた入管審査に転換するよう求める署名5万3000筆を提出した。入管職員は、内部で共有すると述べるにとどまった。
署名の呼びかけを始めたのは、クマールさんの店の常連で、鶴ヶ島市に住む十数年来の知人、鶴ヶ島たろうさん(仮名)。クマールさんから話を聞き、深刻な状況を知ったことをきっかけに、オンライン署名「#推しエスニックといつまでも」を開始した。
鶴ヶ島さんは、「(入管は)あまりにも酷い。強い憤りを覚える。これは人権問題であり、必ず撤回させなければならない」と訴えた。署名では、資本金の額ではなく、営業実態に基づく在留資格審査への転換を求めているほか、経過措置の延長と省令を改正した根拠を明らかにするようを求めている。