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コメント
竹信三恵子(ジャーナリスト)
原発事故当時6歳だった少女に、13歳で甲状腺がんがみつかり、16歳で転移が判明する。その経緯を当事者に寄り添って映像化したこの作品を通じて、2011年3・11に起きたことはなんだったのかが、15年かけてじわじわと身体に染み入ってくるような感覚を味わわされた。
中でも言葉を失ったのは、少女が原発のある町を歩くシーンだ。少女の歩みと共に、かつて人が住み、いまはだれもいなくなった場所が映し出され、それを通じて、人がいなくなるほどの事故があそこで起きたのだ、ということが、私たちにシンプルにつきつけられる。
取材する側にとって、被害者に語ってもらうことは本当に難しい。人は、あまりに傷ましく、恐怖が強い経験をしてしまったとき、それを言葉にできない。ただ、それでも、それを話すことで、孤立から救われ、癒しへの一歩を踏み出せることがある。そうした瞬間に立ち合えるかどうかが取材することの存在意義であり、正念場かもしれない。
この映像は、そんな被害者の10年を、その傍らで黙って映し出し、語れないが語りたい、忘れたいが忘れたくない、という人の複雑さを浮かび上がらせている。
小出 裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
標準的な原発が1年動けば、広島原爆1000発分の死の灰を作る。原発とはそれをため込みながら動く機械である。万一でも事故を起こせば、被害が破局的になることは分かっていた。でも東京電力は技術の力でそんな事態は防げると豪語し、国も「厳重な安全審査」をしたとして、それにお墨付きを与えた。
しかし2011年3月11日、東京電力や国の想定をはるかに超える事故が起こった。防災など全く役に立たず、なす術もないまま子どもを含めて住民が被曝した。国と東京電力は「想定外」だったので仕方ないと言い訳した。
原発事故時の被曝が子どもに甲状腺がんを引き起こすことはすでに知られていた。そして、フクシマ事故の後、現在までに400人を超える子どもたちが甲状腺の摘出手術を受けた。映画の中で明るく振舞うこはくさんの中にどれほどの苦悩があるのだろう?こんな重荷を子どもたちに負わせた責任は、いったいどこにあるのか?被害を訴えると「風評被害」を煽ると批判される中、こはくさんを含め立ち上がった子どもたちがいる。彼らに幸あれと私は願う。
菅谷 昭(元松本市長・医師)
私が松本市長の頃、市役所を訪れた福島在住の母親の皆さんからこのような声を聞いた。女子高生たちが学校で「私たちは国から見棄てられたんだ。“棄民”なんだよね。だからもうどうなってもいいんだ」と。一瞬耳を疑った。しかしこれは若者たちの切実な叫びだ。
私はかつてチェルノブイリ原発事故により甲状腺がんに罹患したベラルーシの子どもの治療に関わった。その折に痛感したことは、原子力災害による子どもたちの苦痛とは「彼らの生きる権利」への侵害に伴う肉体的および精神的な痛みや苦しみであり、まさに「子どもたちへの虐待」に通ずるものである。
本ドキュメンタリー「波打ち際に足跡を残す」は、私がその昔突きつけられた衝撃が再現されている。日本でも同様の過酷な現実が!こはくさんが近い将来立ち直り、光を見出し力強く生きることの喜びを享受して欲しい。是非多くの皆様が本作品を鑑賞され、その実体を深く知ってくださることを強く願う。
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