オリンピック
2016/03/25 - 06:30

五輪に向けホームレス強制排除へ〜新国立競技場建設問題


 
新国立競技場建設の遅れに焦りを感じている日本スポーツ振興センター(JSC)が、3月中の「準備工事」着工を目指して、ホームレスの強制排除に乗り出した。裁判所の判断によっては31日にも、強制排除が可能となる。
 
JSCは14日、工事予定地である明治公園内で暮らすホームレスに対して、土地の明け渡し求める仮処分申請を東京地方裁判所に申し立てた。24日には、第1回目の審尋が開かれ、東京地裁は来週31日にも結論を出す見通しだ。
 
明治公園はもともと行政の公共財産だが、東京都が、法的には民間企業にあたるJSCに無償貸与したため、裁判は民民同士の係争として処理される。裁判所がJSCの申し立てを認める処分を下せば、JSCは同日中に、ホームレスの強制排除が可能となる。
 
JSCはなぜホームレス排除を急ぐのか?
JSCがホームレスの排除を目指している明治公園は、新国立競技場の建設予定地からは外れている。しかし、新たな国立競技場が、これまでの競技場よりも大規模となるため、下水道の付け替え工事などが必要となっている。明治公園はそのための工事予定地にあたっている。
 
   現在の国立競技場・明治公園周辺       新国立競技場の完成予定図
 
 
新国立競技場の本体工事は今年12月に着工予定だが、その前に、周辺の「準備工事」を終わらせなければならない。JSCの計画では、「準備工事」は3月中に着工する必要があるとしている。JSCは、今回の仮処分の理由について「ホームレスの不法占拠である。土地を明け渡せ。オリンピックの開催自体が危ぶまれる状況にある。」と主張する。
 
現在、明治公園にテントを張り、生活しているホームレスは3人。東京五輪の開催地が決定した2013年以降、東京都から立ち退きを求められていた。ホームレスや支援者らは話し合いで解決するように求めていた。しかし、今年1月27日、明治公園が東京都からJSCへ無償貸与されると、JSCは予告なく公園の出入り口を封鎖。電気や水道なども停止した。
 
その後、支援者は、JSCを繰り返し訪問し、話し合いで解決するように申し入れを続けてきたが、3月2日、突如支援者の一人が逮捕された。逮捕容疑は、1月27日の午前8時すぎに、JSCの職員にバリケードを投げつけたことによる公務執行妨害と傷害。容疑事実から逮捕までの約1ヶ月間あまり、この支援者は何度もJSCの職員と面会を重ねていたが、同容疑について、JSCから指摘されたことはなかったという。
 
支援者は20日間の勾留を経て、今月22日に処分保留で釈放された。一方、JSCは14日に、土地の明け渡しを求めて東京地裁への仮処分を申し立てた。
 

 
聖火台の設置場所など、新国立競技場をめぐっては、深刻な問題を抱えるJSC。ザハ・ハディド氏が監修した計画が建築費用の高さを理由に、去年7月に政府が白紙撤回を決定。11月に再びコンペを行い、「工期短縮」を理由に、建築家の隈研吾氏らと大成建設の計画案に決定した。
 
しかし、当初から比べると完成時期が2018年度中から、2019年11月と大幅に遅れている。JSCが裁判所に提出した仮処分の申立書によると、現在、JSCが示している工事予定は以下のとおり。
 
<準備工事 必要期間:9ヶ月>
3月22日〜迂回路・歩道囲い撤去
3月25日〜樹木移植・伐採
4月1日〜 明治公園内の工作物(ホームレスらのテントなど)撤去
      旧道路埋設インフラ撤去
5月2日〜 旧下水道とりこわし
6月1日〜 明治公園橋とりこわし
<仮設準備工事 必要期間:2ヶ月>
10月1日〜11月30日
<本体工事 必要期間:36ヶ月>
2016年12月1日までに 着工
2019年11月30日竣工・引き渡し
<開催準備期間:8ヶ月>
2019年12月1日〜7月24日
<五輪開催>
2020年7月24日 開会式
2020年8月9日
 
この時期に工事を開始しなければならない理由としてJSCは、樹木を移植しないと樹木が荒れてしまうことや、樹木移植のため最低15メートル四方の作業スペースが必要であるとしている。
 

工程計画(c)大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV/JSC
 

 

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