福島第一原発事故
2017/08/31 - 12:03

小児甲状腺がんのDNA解析〜研究拠点は長崎大


日本財団ブログより(内堀福島県知事に検査縮小を提言する山下俊一教授(右から2人目))

小児甲状腺がんのゲノム解析拠点が長崎大学内にあり、福島県民健康調査で見つかった甲状腺がん患者の細胞やDNAが、かつて福島県の放射線放射線リスクアドバイザーだった山下俊一教授の研究室で保管されていることが分かった。

長崎大学で実施されているのは、小児甲状腺がんの発症遺伝子などの解明を目指したヒトゲノム・遺伝子解析研究。福島医大で手術した小児甲状腺がん患者のがん細胞や血液、DNAなどを譲り受け、長崎大学原爆後障害医療研究所にある「長崎甲状腺腫瘍生体試料バンク」に保存。遺伝子変異のプロファイルを解析するというものだ。来年3月までに300症例の甲状腺がん組織を分析する目標を掲げている。


長崎大学におけるゲノム解析研究の研究計画書の一部

チェルノブイリの研究の延長
チェルノブイリでは1998年、欧州委員会と米国国立がん研究所、笹川記念保健協力財団が計300万ドルを提供し 、「チェルノブイリ甲状腺がん組織バンク(CTB)」が設立された。同バンクには、これまでに3000近い症例が集積され、日本、米国、欧州の研究者に組織の提供をしてきた。

山下教授も、チェルノブイリバンクの試料を活用し、甲状腺の発がん分子機構を解明する研究を続けてきた 。その意味で、この研究はチェルノブイリで積み重ねてきた研究の延長にあり、これまで、様々な学会、医学雑誌に研究成果を報告してきた。

福島医大は現在、日本国内で、かつて経験したことない数の小児甲状腺がん患者を治療しており、その結果、日本では入手困難だった小児甲状腺がんの患者の試料が大量に手に入るようになった。鈴木眞一教授による「組織バンク」構築の研究と、長崎大学を拠点としたゲノム研究は同じ2013年11月8日に、研究計画が倫理委員会に提出されている。

検討委員会の座長だった山下教授が県民の反発を受けて退任した後も、福島医科大県民健康管理センター甲状腺専門委員会「甲状腺診断基準検討部会」座長として検査の方向性を決定し、同時にゲノム研究の中心を担っていることは、県民にも十分知られていない。

福島県民健康調査の甲状腺検査が、2次検査以降、「一般診療」として検査と切り離される中、甲状腺がんをめぐる研究のあり方が、県民から見えなくなっており、情報発信のあり方に改善が求められる。

山下教授は事故後、福島県では「ヨウ素剤の投与は不要」と主張する一方、甲状腺検査を開始、しかし昨年12月、甲状腺がんの多発は「過剰診断」の恐れがあるとして、福島県の内堀知事に対し、検査の縮小を提言していた。

研究番号1318「小県民健康管理調査の一貫としての福島県在住賞小児に対する甲状腺検査」研究計画書
研究番号1909「小児甲状腺癌の分子生物的特性の解明」研究計画書
研究番号1897「若年甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の鶏鳴」研究計画書

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