2018/10/11 - 13:45

豊洲市場が開場〜2年延期も課題山積

東京・江東区の豊洲市場が11日午前0時に開場した。安全性への懸念などを理由に、小池百合子知事が移転延期を表明したため、当初予定より約2年遅れとなる。新市場での初競りでは勢いのよい声が飛び交い、活気に溢れる一方、周辺の道路は早朝から渋滞し、買い出し人や運送会社などからは怒りの声がもれた。

車が全く動かない!
まだ夜闇に包まれた豊洲市場。マグロのセリが始まる前の午前4時、周辺道路は渋滞で車が動かなくなった。OurPlanetTVのクルーもプレスの受付になかなか着けず、車から降りて歩いて市場へ。水産仲卸売場棟への出入り口は1箇所。しかも道幅が狭いため交通は麻痺。渋滞に巻き込まれて、プレス受付時間に大幅に遅刻するメディアもあった。

豊洲市場の開場取材に集まったメディアは46媒体約150人。このため、メディアがぞろぞろと市場を横断して取材することに。マグロのセリは抽選で撮影場所に案内される。OurPlanetTVは比較的遅い時間に到着したものの、くじ運がよく11番。

蒸し暑い!
午前5時すぎ。一度は移転の延期を決めた小池百合子知事が到着し、水産卸売場棟の開場記念セレモニーではじめての挨拶をした。小池知事は「わずか4日での築地から新市場への移転。胸が暑くなる思いがしました。これで、豊洲市場に魂が入れらます。」と力を込め、「なかなか慣れない。使い勝手がまだわからないという声もありますが、東京の中核的な市場として育てていく」と不十分な施設への批判を牽制した。

威勢のいい一本締めのあと、いよいよ移転後初の生マグロのセリが始まった。競り人が鐘を鳴らすと、威勢のいい声が響き、次々とまぐろが競り落とされていく。施設の管理温度は25度だが、卸業界の団体が独自に天井にファンを設置し、鮮度を保つために15度くらいまで下げている。

問題は湿度。かつての築地市場は屋根も壁もない開放式だったが、今度の豊洲市場は厚いコンクリートで覆われた閉鎖式。このため通気が悪く、湿度は70パーセントを超える。マグロや魚にカビでも生えたら大変だと不安の声もあがる。準備段階で、除湿機を整備したが、効果があがっているとは言えない。

撮影場所に指定された「マグロ卸売場見学デッキ」もガラス全体が結露し、せりの様子が見えない。仕方なく、撮影陣は高い脚立の上にたち、ガラスがないわずかな空間から撮影することに。とはいえ、50ものメディアが殺到しているため、撮影場所を確保できず、弾き出されるカメラマンも。脚立の合間からなんとか撮影しようと、ガラスをタオルや紙で拭く涙ぐましい様子も散見された。

仲卸業者と仕入れ客から不満噴出
6時半。今度は青果棟でせりが始まった。築地の1.7倍の広さとなった豊洲市場の青果棟の中央部には、本格的な厨房を備えた「フレッシュラボ」を整備。今後は産地の食品を商品をその場で調理し試食できるようなPRの場とする。開会セレモニーで小池知事は青森産のりんごを試食。初せりを見学した。松茸には1箱30万円という高値がつき、ご祝儀相場に沸いた。

一方、仲卸棟ではあちこちから不満の声が漏れた。平屋構造だった築地市場と異なり、水産卸、水産仲卸、青果の3棟がそれぞれ独立した建物に入居している。導線の複雑さに混乱する業者の姿や、商品を運ぶ小型運搬車ターレがバッテリー切れで立ち往生する場面も。仲卸業者が並ぶ1階から、仕入れ業者の車が並ぶ4階まで、坂道を走るために、これまでより、充電が切れやすいという。充電を行える電源も少ないため、頻繁に充電することができない。

交通マヒで商品が届かない!
午前7時半。4階の駐車場では悲鳴があがっていた。渋滞の列が続き、車が30分以上止まったままだという。水産仲卸業売場棟の駐車場の出入り口は1箇所。しかも、豊洲市場から晴海埠頭をへて、築地、銀座方面に向かう晴海通りが渋滞で完全に麻痺し、帰れなくなっていた。館内では、晴海通りを使用しないよう呼びかける放送が鳴り響くが、効果は薄い。

車から降りて様子見をしていた運送業者は嘆く。「出入り口が1箇所だもん。予想していたよ。なんでこんな設計になってるんだ。これじゃ間に合わない。みんな首だよ」すでに30分以上、4階から降りることができず、配送先まで間に合わない可能性が高いという。イライラが止まらないのか、おもむろにタバコを取り出し、吸い出した。「あんな急な坂道、冬に雪が振ったらどうするんだろうね。凍って上がれないよ。誰か対策考えてるの?」と不信感を抱く。

渋滞の緩和策として、東京都は午前7時、工事中の環状2号線の一部をの開通を決断。市場関係者に限って利用できるようにしたため、多くのトラックが2号線を行き交った。

「水がない鮮魚市場は異常」〜衛生面に不安
仲卸業者の仕事が落ち着く時間。築地市場では見られなかった、不思議な動きが見られた。排水口がつまるため、金網をどけて側溝を掃除する姿だ。鮮魚を扱う仲卸業者は、衛生を保つために、大量に水を使いながら魚をさばき、小売業者に販売する。その排水が、排水溝につまると、異臭を放ったり、腐敗するからだ。

「1日に2〜3度は必要」「あっちでは排水溝から変な匂いの水が吹き出していた。大丈夫なのかね」と衛生面での不安が隠せない。

さらに問題なのは、4階の駐車場に水が通っていないことだという。仲卸業者から小売業者に販売された鮮魚類は、4階の駐車場で車に搬入する。この際、魚介を運ぶ発砲スチロール箱から水が漏れるが、駐車場には水場がほとんどないため、床を掃除することができない。数日経てば、異臭を放つのではないかと不安の声があがる。

築地市場で営業店舗
都は即座に築地市場の解体工事に着手したが、仲卸業者の間には、帰れれば帰りたいという声も根強い。築地での営業権を主張する仲卸業者などが11日も、築地市場の入り口を突破し、築地市場内で1店舗が営業を行なった。12日も築地で数店舗が営業を行う予定だ。

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