2022/08/10 - 11:42

一刻も早く全ての核のボタンを無用のものに~原爆投下から77年~

広島と長崎への原爆投下から77年を迎えた。ロシアによるウクライナ攻撃が続き、核兵器使用の危機が高まる中、広島市の平和記念公園では6日、平和記念式典(原爆死没者慰霊式・平和祈念式)が営まれ、松井一実市長は平和宣言で「一刻も早く全ての核のボタンを無用のものにしなくてはならない」と訴えた。

早朝から多くの参拝者が訪れる広島平和記念公園

朝4時過ぎ。まだ日も昇っていないうちから、多くの人が平和記念公園内に集まってくる。お年寄りから、子ども連れや赤ん坊を抱えている人まで、年齢層は幅広く、原爆死没者慰霊碑に向かって手を合わせたり、花をたむけたりする姿が見られた。

12年間、原爆ドーム前で絵を書き続けている男性

朝6時。原爆ドームを臨む対岸には、絵を描く男性の姿があった。原爆ドームを取り囲むように沢山の人魂(ひとだま)のようなものが浮遊している。独特な色使いと迫力が感じられる。

「午前0時から描いています。」

絵を描きいているのは、広島県呉市在住の鷹取昌史さん。学校の教師をしていた鷹取さんが、原爆ドームの前で絵を描き始めたのは12年以上前。がんを患い、余命わずかだった年上の友人から、戦時中に身につけていたものを譲り受け、自分の経験を若い世代に伝えてほしいと頼まれたことがきっかけだという。

絵を描く鷹取さん(手前)

「自分にできることは何か?」を考えたとき、絵を通して次世代に伝えていくことを決めた。友人が亡くなった12年前から毎年、この場所で絵を描き続けている。「これを入口として興味を持ってもらって、勉強を深めてもらいたい。」完成した絵は、特に子ども達に見てもらいたいと鷹取さんは願っている。

「やはりお子さんだと、いきなり写真や映像を見せると、恐がってそれ以上学ぼうとしなくなることがある。まずはこの絵画のようなもので興味を持ってもらって、そこから学びを深めていってくれたら。”パパ、ママ、これなに?”という何気ない会話から、戦争とは何か、核とは何か、というきっかけにしてほしい。」

平和記念式典「一刻も早く全ての核のボタンを無用のものに」

8時15分。世界で初めて原爆が投下された時間。平和の鐘が鳴り、1分間の黙とうが行われた。被爆者・被爆者遺族席をはじめ、一般席、自治体席、外国人席の約3,550人が参列した。今回ロシアの招待は見送られた。

松井一實広島市長は平和宣言で、「為政者に核のボタンを預けるということは、1945年8月6日の地獄絵図の再現を許すことであり、人類を核の脅威にさらし続けるものです。一刻も早く全ての核のボタンを無用のものにしなくてはなりません。」「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」と訴えた。

また広島県出身の岸田文雄総理大臣は「77年前のあの日の惨禍を決して繰り返してはならない。」「我が国は、いかに細く、険しく、難しかろうとも、「核兵器のない世界」への道のりを歩んでまいります。このため、非核三原則を堅持しつつ、「厳しい安全保障環境」という「現実」を「核兵器のない世界」という「理想」に結びつける努力を行ってまいります。」と述べた。

【参考】
平和宣言全文(広島市ホームページ)
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/atomicbomb-peace/179784.html

広島市「よくある質問と回答」
原爆ドームは、原爆が投下される前は何だったのですか?
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/faq/9410.html

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