小児甲状腺がん
2019/07/01 - 18:15

委員、直前まで知らされず~被曝否定の根拠データ

福島県で実施されている甲状腺検査について、「2巡目の甲状腺がんと放射線被曝との間には因果関係なない」と結論づけた甲状腺検査評価部会の報告書。その根拠となる解析データが間違っていた問題で、委員が修正データを受け取ったのは、報告書の公表が迫るわずか1週間前だったことが県議会で判明した。データに関する検証も説明がないまま、報告書が公表に至ったことになる。

解析が誤っていたのは、2月22日に甲状腺検査評価部会で公表されたデータ。国連科学委員会(UNSCEAR)が推計した甲状腺被曝吸収線量と2巡目でみつかった甲状腺がん71例を比較したもので、線量と甲状腺がんの発生率には因果関係は見当たらないとする報告書の根拠となっている。ところが、4月に入り、その解析結果に大きな誤りがあることが発覚。しかし、この修正版が示されないまま、報告書が取りまとめられた。

4月8日の検討委員会前日に「誤り」認識と答弁
28日に開催された県の福祉公安委員会で、古市三久議員がデータの修正経緯と報告書の作成時期との兼ね合いについて質問したところ、菅野達也県民健康調査課長は、誤りについて知ったのは4月7日だったと答弁した。また医大から修正版を受け取ったのは5月23日、部会委員に送付したのは27日だったと述べた。

しかし、すでに県が誤りを把握していたはずの4月8日の検討委員会では、誤りについての説明はなかった。これについて、古市議員は、会議の場で一切、説明がなかったことを批判。問題がわかった時点で説明するよう求めたが、戸田光昭保健福祉部長は、「当然に必要な説明は、必要な場面でしている」などを反論。データの母数が公表されていないことなどについても、専門家の意見に沿ってやっているなどを繰り返し答弁し、一切、謝罪をしなかった。

「専門家任せ」の姿勢浮き彫りに
古市議員はこのほか、今回の解析データに解析した対象者の人数が記載されていないことについて、鈴木元評価部会長が、査読付きの論文が公表されるまでは公開できないとしていることを問題視。県民のための検査なのだから、県民への公開を優先すべきだと迫ったが、戸田保健福祉部長はこれにも反論。データを公開していないのは、県民にわかりやすく伝えるためだとする考えを示した。

また、集計外患者11人が含まれていないことや、UNSCEAR報告書の被ばく線量推計が不十分ではないかと質問に対しても、「出し方も含めて、部会なり検討委員会に議論してもらいたい」と答弁。古市議員がデータを放置せず、県民に安心安全が担保できるような報告書にするべきではないかと質したのに対し、戸田部長は、「議論が足りない、データが足りないというなら、部会や委員会の中で議論される話」だとして、県の関与を否定した。戸田部長は、福島県立医大の企画・管理運営担当の理事兼事務局長から、今年4月に県の保健福祉部長に就任した。

解析ミスの説明ないまま報告書公表へ
OurPlanetTVの取材によると、県から委員に検討委員会の資料が届いたのは27日頃で、その中には、すでに報告書はあったという。報告書への意見の締め切りまで極めて短く、月末の繁忙期に、十分に内容を吟味することは難しかったという。また、県の解析データに誤りがあったことに関する説明はなく、6月3日の評価部会で初めて知ったという。委員の意見を反映した最終版が委員に送られてきたのは31日。同日、共同通信が公表される報告書の内容を報道している。

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