大川原化工機冤罪事件「保釈却下の理由聞きたい」〜裁判官の責任問う裁判はじまる
産業用機械メーカー「大川原化工機」をめぐる冤罪事件で、勾留中に胃がんで死亡した同社元顧問の遺族が、保釈を認めなかった裁判官の判断は違法だったとして国を訴えている裁判の第1回口頭弁論が29日、東京地方裁判所で開かれた。国側は争う姿勢。
死亡したのは、大川原化工機の元顧問・相嶋静夫さん。相嶋さんは2020年3月、武器への転用が可能な機器(スプレードライヤ)を違法に中国などへ輸出したとして逮捕、起訴された。相嶋さんは勾留中に胃がんが判明したものの、「証拠隠滅のおそれがある」として保釈が認められないまま、2021年2月に一時的に入院していた病院で死亡した。事件はその年の7月に起訴が取り消され、公訴棄却として終結した。
相嶋さんの妻と息子2人は今年4月、逮捕や勾留を認め、死亡するまで保釈請求を退けるなどした裁判官37人の一連の判断は違法だったとして、国に対し約1億7000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
遺族「生きていてほしかった」
初めての弁論となったこの日は、相嶋さんの妻が法廷に立ち意見陳述を行った。妻は、相嶋さんの仕事が一区切りしたため、老後の生活を楽しみにしていたという。ところが2020年3月に突然逮捕され、勾留中の同年10月に胃がんであることがわかった。面会に行くと「げっそりと痩せ、顔が青白くなっていた」といい、なんとかしたいという思いで、相嶋さんに「嘘の自白をして、保釈してもらい病院に行こう」と提案したこともあったという。
その後、一時的に勾留が停止となって入院したが、すでに手遅れの状態だったという。入院後も繰り返し保釈を求めたが認められず、相嶋さんは「これでも人間なのかねぇ」と涙を流しながらつぶやいたという。
陳述の最後に子どもや孫と一緒に写った相嶋さんの写真が法廷で投影されると、「夫にはまだ生きていてほしかった」と涙ながらに訴え、「なぜ保釈請求が却下されたのか、裁判官に理由を聞きたい」と述べた。
期日後の記者会見で妻は、「裁判官の良心に従って、逃げずに公平な判断をしてほしい」と話した。次回の期日は10月30日。