福島で見つかっている甲状腺がん患者をめぐり、福島県立医科大学(以下、福島医大)の塩功貴医師は5月22日、日本内分泌外科学会で、再発の危険因子に関する解析結果を発表した。福島で見つかっている小児・若年甲状腺がん患者の再発について、詳しく学会で発表するのは、2023年12月の日本甲状腺学会における鈴木眞一教授(当時)の発表に次いで2回目となる。

発表によると、解析対象は、「県民健康調査」で細胞診を行い悪性または悪性疑いと診断された患者のうち、2012年6月から2021年9月までに福島医大で治療を行った220人から、肺転移を来していた患者など7人を除いた計213人。若年の甲状腺がんは予後が良好と言われるが、再発率は2割に上る報告もあるため、再発リスクの因子を解析した。
213人の年齢や術式、病理所見と予後の関係性を後ろ向きに検討したところ、観察期間中、17人に甲状腺癌の再発が認められたという。2023年の鈴木氏の学会発表では、21人に再発が認められたと公表していたが、今回は、肺転移症例5人を除外したため、4人少ない人数となったと見られる。
15歳未満の患者は2割が再発
塩医師によると、再発リスクが有意に高かったのは、1回の手術時年齢が低い患者で、15歳未満では、18歳以上の患者より、ハザード比が6倍以上高く、15歳から17歳でも3.7倍高かった。手術した対象者は、18歳以上が123人、15歳から17歳が58人、15歳未満が32人で、年代別の再発率は公表されなかったが、ハザード比からOurPlanet-TVが推計したところ、15歳以下では再発率は2割を超えた。
一方、全摘と片葉切除という術式の違いによる差はなかったという。塩医師は、対側リンパ節転移がなく、遠隔転移のない症例は、片葉切除が許容されるとした上で、再発リスクの危険因子は、18歳未満、外側部のリンパ節転移、甲状腺内散布、術前のリスク分類で「高リスク群」であると結論づけた。
臨床がんと近似した研究結果
若年の甲状腺がんは予後が良好と言われる一方、再発率が2割を超えるという報告もある。例えば、伊藤病院の医師らの論文によると、1979年から2014年の36年間に伊藤病院で初回手術治療を行った18歳以下の甲状腺分化癌症例のうち、初回に根治手術がなされた153例を対象に、後ろ向きに予後を検討したところ、観察期間中央値14年で,34例(22%)に再発を認めたという。
福島医大で初回手術を受けた18歳以下の患者の再発率はこの研究より良好だが、スクリーニングにより、手術の不要な「潜在がん」を摘出しているという指摘は、臨床実態からかけ離れていることが判明した。甲状腺検査で見つかった手術症例の再発率をめぐっては、鈴木眞一特任教授が2016年、OurPlanet-TVの取材に対し、いずれ論文を発表したいと発言したが、現時点ではまだ公表されていない。