東京電力福島第一原子力事故をめぐり、東京電力の株主が旧経営陣に対し、23兆円の損害賠償を求めた「東電株主代表訴訟」の控訴審判決が6日、東京高等裁判所で言い渡された。木納敏和裁判長は、津波の予見性を否定し、旧経営陣に13兆円余りの賠償を命じた一審判決を取り消し、原告の訴えを棄却した。
提訴されたのは勝俣恒久元会長、清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤たけし元副社長、小森明生元常務の5人。一審判決では、津波の予見可能性を認め、対策を講じれば事故は防げたとして、小森氏を除く4人に対して、13兆円余りの支払いを命じていた。
津波による事故を防げたかどうかをめぐっては、原発事故の避難者などが、国と東京電力に損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁判所が2022年6月16日、「実際の津波は想定より規模が大きく、仮に国が東京電力に必要な措置を命じていたとしても、事故は避けられなかった可能性が高い」と判断し、国に責任はなかったとする判決を言い渡したほか、勝俣氏、武黒氏、武藤氏の3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された刑事裁判でも今年3月。無罪判決が確定していた。
原告の木村結さんは「福島で頑張っている人に素晴らしい判決を届けられなかった。」「これからの原発事業者にとって、事故前とは同じではだめだと言ったにもかかわらず、なぜ、誰一人責任を問わないのか。なんでこんな判決が書けたのか。信じられないし許せない」と悔しさを滲ませた。原告は上告する方針。