東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内に住んでいた若者が東京電力に損害賠償を求めた「311子ども甲状腺がん裁判」の第19回口頭弁論が9月9日、東京地方裁判所で開かれた。書面による主張はほぼ最後となり、双方がこれまでの主張をまとめた書面を提出。法廷で45分間のプレゼンを行った。
原告側の代理人として、まず法廷に立ったのは、西念京佑弁護士。原爆症認定訴訟や公害事件等の判例を示しながら、因果関係の判断には疫学を用いるべきだと主張。この裁判の原告は、放射線被曝によって甲状腺がんとなった原因確率は、95%以上に上るなどとして、原告が被曝したことが確認できれば、個別の被ばく量を立証しなくても、因果関係が認定できると説明した。
続いて、井戸謙一弁護士がプレゼンし、被告の主張するスクリーニング効果論について、詳細に反論。また、被告が根拠としているUNSCEAR2020報告書が、事故当時の放射性プルームを適切に再現できていないと批判した。
一方、被告・東電側でプレゼンをしたのは、シティーユーワ法律事務所の棚村友博弁護士。多くの原発被害者訴訟で、東京電力の代理人を務めている。事前に、パワーポイントの資料は提出していたものの、スクリーンには映写せず、口頭のみで発表した。被告側は、原告側は個別の被ばく線量を立証すべきであると主張。100ミリシーベルト以下では放射線によるがんの増加は見られないが、UNSECAR報告書によれば、原告の被ばく量は10ミリシーベルト以下であるとして、原告のがんは放射性起因性ではないと反論した。
証人尋問は2027年4月21日から
口頭弁論に先立つ進行協議では、来年4月以降の証人尋問について、調整がおこなわれた。正式な採用には至っていないが、原告側の証人としては、黒川眞一高加速器エネルギー研究機構名誉教授と菅谷昭元松本市長、被告側の証人としては、明石真言東京医療保健大学教授と、杉谷巌日本医科大学病院教授の証人尋問が行われる見通しだ。
UNSCEAR報告書の被ばく線量をめぐっては、黒川氏と明石氏、スクリーニング効果については、菅谷氏と杉谷氏が真っ向から対決する構図となった。最初の証人尋問は、2027年4月21日午前10時から、東京地裁103号法廷で開かれる。