小児甲状腺がん
2022/05/11 - 21:21

福島「県民健康調査」検討委・座長に高村昇氏〜甲状腺がんは301人

東京電力福島第一原発事故後に福島県で行われている「県民健康調査」の検討委員会が15日、福島市内で開かれ、新たな座長に長崎大学教授の高村昇氏が選ばれた。昨年10月、5期目連続で座長に就任した星北斗福島県医師会副会長は退任。副座長だった稲葉俊哉副座長、小笹晃太郎放射線影響研究所疫学部長、堀川章仁双葉郡医師会会長も退任した。昨年10月15日に開催されてから実に7ヶ月ぶりの開催で、3ヶ月ごとに年4回開催するとの開催要項からは大きく遅れる開催となった。

10月に第5期が始まったばかりにも関わらず、4人もの委員の退任は極めて異例。星氏は昨年12月18日、自民福島県連による参院選出馬要請を受諾している。県によると、星座長の退任はその約1ヶ月後の1月12日で、後任には新妻和雄福島県医師会常任理事が就任した。また小笹氏の退任は3月31日で後任は坂田律疫学副部長。さらに堀川氏の退任は3月1日で後任は重富秀一双葉郡医師会副会長。稲葉氏は5月11日で退任し、公認は空席となった。

新たな座長に就任した高村氏は原発事故後、同じ長崎大学の山下俊一元教授とともに、福島県の放射線リスク管理アドバイザーに就任。3月25日に飯舘村を訪れて講演し、村民の前で、「医学的には注意事項を守れば、健康に害なく村で生活していけます」(飯舘村広報紙・3月30日発行)と述べていた。低線量域の被曝影響を否定する立場として知られ、現在は双葉伝承館の館長なども務めている。高村氏は就任後、「委員を9年近く務めているが、県民の不安に寄り添い、健康を見守るという調査の本来の目的を果たすため、よりよい調査を行うために議論していきたい」と述べた。

福島県の甲状腺がん、集計外含め301人


甲状腺検査結果は、昨年9月30日までに集計された4巡目、5巡目、25歳の節目検診の結果が公表され、甲状腺がんの疑いがあると新たに診断されたのは、4巡目が1人、5巡目が3人、節目検診は4人の計8人で、穿刺細胞診で甲状腺がんの疑いがあると診断された患者は273人となった。全国がん登録などで把握された集計外の患者をあわせると、少なくとも301人が甲状腺がんと診断されたことになる。また、4巡目で3人、5巡目で2人が新たに手術を行い、全て甲状腺がんと確定した。甲状腺がんと確定した患者は226人となった。

第44回「県民健康調査」検討委員会 資料5-1、5-2、5-3をもとに作成


なお4巡目でがんと診断された37人のうち、前回検査はA1判定が6人、A2判定が19人(結節5人、嚢胞13人、結節・嚢胞1人)で、B判定9人、未受診は3人だった。また、5巡目で甲状腺がんと診断された6人のうち、前回の検査結果がA1判定だったのは1人、A2判定が2人(嚢胞1人、結節・嚢胞1人)、B判定2人、未受診は1人だった。さらに5巡目の13人では、A2判定が2人、B判定3人、未受診は8人だった。

継続的に検査をしている受診者では、前回の検査では、結節所見のなかった人の割合が多く、また25歳節目検診では未受診者の割合が高い。節目検診は受診対象者が89,693人だが、受診者はわずか8163人(9.3%)と受診率は1割を切っている。県の甲状腺検査を受けていない層の中で、自覚症状によるがんの発症がどの程度、増えているか。全国がん登録による把握が急がれる。

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